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株主資本コストを計算してみた

 株主資本コストを計算してみた

企業価値を向上させるためには、ただ利益を上げるだけではなく、事業を行なうために調達した資金にかかるコスト(資本コスト)以上の利益を上げなければならない。そうした考え方は長らく日本においては軽視されてきたが、近年の一連のコーポレートガバナンス改革により注目されている。

 

自分自身も企業の資本コスト算出方法については、これまで大学の授業等で習ってはいたものの、算出の際に用いる数値が実態とかけ離れていることもあり、上手く使えていなかった。しかし、最近読んだ『企業のための資本コスト試算マニュアル』(明田雅昭、2020年)というレポートでは、企業で実際に用いられている平均的な条件の数値などが示されていたので、今後の投資の参考にしようと思い、主力株にしているビオフェルミン製薬の資本コストを推計してみた。

 

 ビオフェルミン製薬の株主資本コスト

資本コスト推計で最も利用されているCAPM理論に基づいてビオフェルミン製薬の資本コストを推計する。CAPM理論によれば、企業の株主資本コストは「株主資本コスト=Rf+β×(Rm-Rf)」で表すことができ、全ての企業で共通のRmとRf、企業固有のβの3つで決まる。

 

それぞれの値は、

  • Rf=リスクフリーレート(教科書では10年国債の利回り)
  • β=個別資産の市場全体に対する感応度
  • Rm=市場期待リターン
  • (Rm-Rf)=リスクプレミアム

である。大学の授業ではリスクフリーレート(Rf)には10年国債の利回りを用いると習ったが、レポートによれば、近年、10年国債利回りがマイナス化していることなどから実際には20年国債の利回りがリスクフリーレートに近いようだ。またリスクプレミアム(Rm-Rf)は6.9%を推奨値としていた。β値はロイターが対TOPIX5年間のものを公開しているのでそれを用いる。

 

それぞれ実際の数値を当てはめると、Rf=20年国債利回り=0.38、Rm-Rf=6.9%、ビオフェルミンのβ=0.37、であった。

 

よって、「ビオフェルミン製薬の株主資本コスト=0.38%+0.37×(6.9%)=2.85%」となる。

 

 エクイティスプレッド

ビオフェルミン製薬企業価値を向上させるためには、株主資本コスト2.85%を上回るROEを達成しなければならない。平均的に同社は長期的に7.0~10.0%程度のROEを維持しているため、株主資本コスト2.85%と比較すると4.0~7.0%のエクイティスプレッドがあることになる。つまりビオフェルミン製薬は長期安定的に企業価値を創造している企業だ。

 

 感想

ビオフェルミン製薬は足元ではPBR0.90~1.00倍程度で評価されているが、長期的に安定して4.0~7.0%のエクイティスプレッドを維持している割には評価が低いように感じる。また同社は投資家に対する情報開示姿勢などがやや後ろ向きであり、決算や事業の詳細な説明や中期経営計画の策定・開示などを行なうことでさらに資本コストを低下させることができるはずだ。来年の株主総会では資本コスト関連の質問をしてみたい。

 

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