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新報国製鉄の株主総会招集通知

 新報国製鉄の株主総会招集通知

3月に入り、12月決算企業の株主総会招集通知が続々と公開され始めている。

株主総会招集通知には、株主総会の日時や開催会場、提出議案の説明はもちろん、決算短信よりも詳細な財務諸表、財務諸表注記、大株主の状況についても最も早く知ることができるため、情報源としての価値は意外と高い。

そのため、最近は毎朝、適時開示閲覧アプリでその日に公開された各社の株主総会招集通知を確認してから一日を始めているが、つい先日、招集通知からおもしろい企業を発見した。

 なぜ、住宅展示場で株主総会を?

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そのおもしろい企業とは新報国製鉄(5542)である。新報国製鉄は、半導体、液晶、有機ELの製造装置部品として使われる、高温でも膨張しない低熱膨張合金を手掛けるメーカーだ。この新報国製鉄の株主総会招集通知で目に留まったのは、不思議なことに株主総会川越市の住宅展示場のインフォメーションセンターで開催していること。ちなみにもちろん新報国製鉄は住宅メーカーではない。

では、なぜ住宅展示場で株主総会を行なっているのか。

それは新報国製鉄がこの住宅展示場の地権者であるからだ。有価証券報告書にも住宅展示場のことは詳しくは記載されていないものの、新報国製鉄は川越市内に33,178㎡の土地を保有していると書かれており、新報国製鉄本社、スーパー、100円ショップ、そしてこの住宅展示場がある一帯を面積計測サイトで計測するとだいたい35,000㎡となることからこの一帯の土地を保有し賃貸していると推測できる。

 実質的なPBRはもっと低い

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新報国製鉄は、こうした賃貸等不動産から年間約1.5億円の利益を得ており、この土地の賃貸等不動産評価額は32.7億円に上っている。貸借対照表計上額がほぼゼロであるため、そっくりそのまま32.2億円の含み益を抱えている計算だ。

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足元では「900℃でも膨張しない低熱膨張合金の量産技術を開発した」との報道で、仕手化し、2月末に1,000円台だった株価が3月5日には2年9か月ぶりに2,000円台に急伸し、PBRも1.59倍まで上昇しているが、2020年12月期の純資産42.3億円に比して不動産含み益が大きく、実質的なPBRはまだちょうど1倍というところ。値動きが再び1,000円台まで落ち着いてくるようなら実質PBRは約0.5倍となり十分魅力のある投資対象となるだろう。汎用品ではなく、低熱膨張合金というニッチで勝負している同社の事業も興味深く、余裕があったら今度は事業の方も分析してみたい。

 今日の関連株

  • 新報国製鉄東証一部 5542)鋳鋼品中堅メーカー。半導体や液晶、有機ELの製造装置部品に用いられる低熱膨張合金が収益柱。