カストディアンの裏にいるのは?
カストディアンの裏にいるのは?
先日、8月31日に著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社(伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井物産、三菱商事)の株式をそれぞれ5%超取得したことが明らかになり話題となった。バフェット氏がどのような点に目を付けて、初めての日本株投資として総合商社を選んだのかには様々な憶測があったが、この投資について、おもしろい視点からのツイートを見た。
株主名簿のBNYメロン・ノーウェスト・ウェールズ・ファーゴ・オムニバスは実質バフェットさん?
— ありゃりゃ (@aryarya) 2020年8月31日
5大商社の2020年3月期有価証券報告書の大株主情報にはいずれも「BNYM RE NORWEST/WELLS FARGO OMNIBUS」という資産管理銀行(※カストディアン)が4%超の株式を保有していると記載されており、その裏にいるのがバフェット氏ではないかとの思惑だ。そして同じ資産管理銀行が大株主になっている三菱UFJフィナンシャルグループもバフェット氏の投資先だとの見方が出た。
(※資産管理銀行とは、投資家に代わって有価証券の保管・管理などの業務を行う金融機関のことで、BNYMやSTATE STREET、日本では日本マスタートラスト信託銀行や日本カストディ銀行が有名。)
これに触発されて同じ手法で調査してみたところおもしろいことが判明した。僕が現在1,000株を投資しているビオフェルミン製薬の第3位株主には「THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD-SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8221-563114」というカストディアンが2019年9月末から登場しているが、同カストディアンが大株主として登場する以下の14社のうちの10社で光通信創業者の子息である重田光時氏が大量保有報告書を提出していた。
- 松本油脂製薬(第3位株主、保有比率8.03%)重田氏が大量保有報告
- オエノンホールディングス(第1位株主、同15.08%)重田氏が大量保有報告
- ヤシマキザイ(第2位株主、同18.09%)重田氏が大量保有報告
- 東京都競馬(第10位株主、同0.87%)
- 富士通フロンテック(第8位株主、1.8%)
- 帝国通信工業(第2位株主、4.73%)重田氏が大量保有報告
- システムディ(第4位株主、5.65%)重田氏が大量保有報告
- 平賀(第1位株主、12.48%)重田氏が大量保有報告
- ナイガイ(第9位株主、2.37%)
- 高砂鐵工(第9位株主、1.27%)
- 日本フェンオール(第1位株主、10.01%)重田氏が大量保有報告
- スーパーツール(第1位株主、4.69%)重田氏が大量保有報告
- ホウライ(第8位株主、2.97%)重田氏が大量保有報告
- 石井鐵工所(第7位株主、3.32%)重田氏が大量保有報告
ということは、おそらくビオフェルミン製薬の実質的な第3位株主も重田光時氏だろう。重田氏がこれら投資先企業の経営陣と対話を行なっているかは不明だが、ビオフェルミン製薬のように素晴らしい事業で素晴らしい業績をあげながら、「自社株買いしない(最後に実施したのは14年前)」「(記念配を除けば)10年間も増配しない」「IRページに有価証券報告書すら載せてない」ような一般株主を無視する経営を続けている企業の経営陣に、重田氏のような非友好的な大株主が良い緊張感を与えてくれることを期待したい。