イオンモール新小松の所有者
▷イオンモール新小松の所有者
街金を題材にした名作漫画『ナニワ金融道』を読んでいる。主人公・灰原達之が街金の帝国金融を舞台に、金に困った中小企業や個人に融資しそれを回収するマンガだ。街金から資金を借りるような不良融資先から資金を回収するために、物語の中では、担保物件や保証人の設定、違法すれすれの駆け引きなどがあり、かなりおもしろい。金融業を扱っているだけに、手形や不渡り、不動産登記簿などについても細部まで描かれていて興味深い。
そんな『ナニワ金融道』では融資先の保有不動産の状況を確認するため不動産登記簿を閲覧するシーンが度々描かれている。不動産登記簿とは、土地建物の所有者、面積、担保権の設定の有無などの権利関係が記載されている帳簿で、その土地建物を管轄する法務局で誰でも自由に閲覧することができる。
インターネットで登記情報を閲覧することもできるので、『ナニワ金融道』に影響を受けて、自分も気になる物件の不動産登記簿をあげてみた。
まずは前から気になっていたイオンモール新小松。イオンモールは効率的に店舗開発資金を回収し、次の開発に回すため、一部のモールをREIT(不動産投資信託)に売却し証券化していたりする。イオンモールの開示資料によるとイオンモール新小松は完成後すぐに「流動化案件」になっており、イオンモールは土地・建物共に誰かから賃借している状況となっていた。
イオンモール新小松の不動産登記簿
これによると、土地はイオンモールの所有だが、建物はASM2合同会社という会社が所有していて、それは三井住友信託銀行に信託されている。おそらくASM2合同会社は機関投資家が出資するファンドで、イオンモールから賃貸料を受け取っている私募REITかなにかなのではないか。ASM2が何者なのかわかるとまたおもしろいのだが。
おもしろい遊び道具を手に入れたので、次は自分の住んでいるマンションの土地建物や周辺の建物の不動産登記をあげてみたいと思う。
▷今日の関連株
北日本紡績の行方
▷北日本紡績の行方
5月1日付の北國新聞には、東証2部の北日本紡績(石川県白山市)の経営陣が臨時株主総会で交代させられたという記事が大きく扱われていた。兵庫県の鋸メーカー「ユーエム工業」の専務を務める宮脇昌三氏らが北日本紡績経営陣の入れ替えを株主提案。結果的にこの株主提案が可決され北日本紡績の経営陣が入れ替えられるという異例の事態となった。
北日本紡績は、石川県の産業界をリードした直山与二氏ら地元有志によって1948年に創業された合繊・紡績糸の名門企業で、主に帝人向けに紡績糸を供給しているが、帝人が生産拠点を海外に移したことなどにより業績が振るわない。
業績の低迷により、一時は時価総額が10億円を下回り、東京証券取引所の上場廃止規定に抵触し、上場廃止の危機にも陥っている有様だ。ここ20年ほどは工場跡地や投資有価証券などの資産を売却しつつなんとか生き長らえてきた形で、目ぼしい資産はほとんど残っていない。鋸メーカーが事業を劇的に改善させられるとも思えない。新社長に就いた粕谷社長は「マネーゲームの意図はない。実業で地元の名門企業を成長させる」と語っているが、株主提案をしてきた投資家らは何を企んでいるのだろうか。
北日本紡績という数十億円で支配できる上場企業を使い、増資などで資金調達を考えている?M&Aなどで実質的に事業を転換し高値で売り抜けるとか?どちらにせよ、事業の将来性も無く、目ぼしい資産もない、純資産5億円の今の北日本紡績がPBR7.5倍の時価総額42億円という状況では投資する魅力はない。
奇しくも旧村上ファンドの村上世彰氏が1999年頃、つまり最も初期に手掛けた銘柄の一つが北日本紡績らしいが、又もや大株主を巡って北日本紡績の動向に大きな変化が起こるのだろうか。
▷今日の関連株
高速を走る「投資のヒント」
▷高速を走る「投資のヒント」
先日、高速道路を走る機会があったが、全くと言っていいほど交通量がない。中日本高速道路は4月の交通量が3割減だったとしているが、4月16日に緊急事態宣言が全都道府県に発令されてからはさらに減少しているようだ。おそらく5月はさらに減少するのだろう。一般車の外出自粛の影響だけではなく、経済活動が停止しているため、トラックの交通量も非常に少ない。運輸・物流関連株も大きく値下がりしているが、高速道路の状況だけを見ても、やはり運輸・物流業界への影響もかなり大きいのだと実感した。
ところで、交通量が少ない分、走っているトラックに注目していたのだが、「C&Fロジ」とボディーに書かれたトラックを1台見かけた。調べてみると、これは投資のヒントになる気がしている。
C&Fロジは、2015年にチルド輸送の名糖運輸と冷凍倉庫のヒューテックノオリンが経営統合し発足した低温食品物流に強みを持つ物流会社。顧客の業界は正確には掴めないが、食品会社、コンビニ、スーパーが大半だと推測される。
高速道路でC&Fロジのトラックを見かけたというのは、不要不急の物流は止まってしまっているが、スーパーやコンビニといった営業を続ける必要のある生活インフラ関連の物流は動き続けていることの証左だろう。おそらく売上高に占める食品物流の割合が大きいC&Fロジホールディングス、キユーソー流通システムなんかは新型コロナウイルスの業績への影響が相対的に小さいのではないか。
また食品物流は「フローズン(-15℃以下)」「チルド(-5℃~5℃)」「ドライ(10℃~15℃)」の3温度帯に関する物流ノウハウ、設備が参入障壁となっている。食品メーカー、スーパー、コンビニといった顧客のディフェンシブさからみても業績の安定性がありそうだ。
運輸・物流業界に限らず、今後の相場は業界の括りだけではなく、こうした個別株の吟味が必要そうである。
▷今日の関連株
トレダビ
▷トレダビ
東京証券取引所に上場する銘柄の実際の株価データを用いる株式売買シミュレーションゲーム「トレダビ」を使って、友達のE君、N君の2人と仮想の所持金1,000万円の運用成績を競っている。期間は『会社四季報春号』の発売週3月9日から『会社四季報夏号』発売週の6月19日まで。敗者は勝者に焼肉を奢らなくてはいけないことになっているだけではなく、3人の中で僕が最も投資歴が長いため絶対に負けられない戦いである。
僕は第1週からJR東日本、JR東海、TOPIX投信、第2週は日本電設、EIZO、第3週はGLPなどの買いで日経平均株価、TOPIXを大きく上回るパフォーマンスで順調に資産を増やしてきた。
しかし第6週目(先週)の時点で、僕は第3位。日経平均株価がスルスルと上がっていくことに違和感を感じ、日経平均寄与度の高いソフトバンクグループの空売り、WTI原油価格連動型上場投信(東証ETF 1671)や日経平均ベア上場投信(東証ETF 1580)の買いで対応しようとしたが、これが裏目に出て第5週目比で-9.8%となった。通算でも日経平均株価、TOPIXをアンダーパフォーム。
しかし基本的には、日経平均株価は上がりすぎだという姿勢に変わりはないため、来週もこのポジションを維持。最終的にこの戦いを決めるのは第8週(4月27日~5月1日)から本格化する決算発表次第であると思うので、個別株の分析も進めていきたいと思う。
ところで、トレダビの運営会社はもともとオンライン専門の証券会社を目指して設立されたが資金繰りの問題に直面し、オンライン証券業をあきらめた歴史があるらしい。そのような経緯があるからか、現実のトレードにかなり近い。仮想の資産である分、思い切って売買ができる点を活かし、トレダビでの経験値をリアルの投資にも活かしていきたい。
▷今日の関連株
バイト先で見つけたBPカストロール
▷バイト先で見つけたBPカストロール
enterprise-research.hatenablog.com
以前、ブログに書いたように、冬用タイヤから夏用タイヤへの交換の繁忙期だった3月から、タイヤ取り付け店でアルバイトしている。
日常生活でも、様々な製品・サービスを投資家の視点から観察したりしているが、タイヤ取り付け店で作業をしていると日常生活ではあまり接点のない企業に触れることが多く、新たな投資のヒントも見つかりそうだと感じている。
例えば、タイヤ交換のピークも過ぎ、作業も洗車や補修といったものが中心になってきているが、カー用品のメーカーがそうだ。洗車剤や補修用材料を手掛けるソフト99コーポレーション〈東証二部 4464〉などがあるが、調べてみて最も気になったのが自動車用潤滑油などを手掛けるビーピー・カストロール。
ビーピー・カストロールは、石油メジャーの英BPが64.9%を出資する子会社で、国内の自動車用潤滑油市場の約5%程のシェアを持っている。「BP」と「カストロール」という有力なブランド力を有するからか営業利益率は安定して20%程度の高収益。そして潤滑油の製造はJXTGエネルギー、中外油化学工業に委託しているため、ビーピー・カストロール自体は工場や製造設備などの固定資産の割合が低く財務も優良。
経営環境はというと、想像に難くないが、日本国内の自動車用潤滑油市場は自動車販売台数の減少、カーメンテナンスへの関心低下などで縮小傾向にあり、ビーピー・カストロールの中期経営計画でも今後売上高は年間1~2%減少していく見込みとしている。
ビーピー・カストロールはこの事業環境に合わせて、2014年頃から経営方針を変更。縮小する市場に投資するのではなく、当期に稼いだ利益の全てを配当として株主に吐き出している。
株価の方は現在、PER18.64倍、PBR2.31倍、配当利回り5.67%。
事業環境の将来性は暗いため、一見、PBR2.31倍だと高い気もするが、毎年稼いだ利益(EPS60~90円)を株主に全て還元していることを考えると、そこまで高くないのかも。原油安メリット&円高メリット&親子上場解消というテーマ性もある。おもしろい。
日々、投資家の視点を持ち、生活の中で触れている製品・サービスはどんな企業が作っているのか、上場しているのか、市場に成長性はあるか、株価は割安か割高か、を気にしてみることは実におもしろく株式投資の醍醐味でもある。普段と違う場に身を置くことで投資家としての経験値も上がるかもしれない。
▷今日の関連株
- ソフト99コーポレーション(東証二部 4464)カーワックス、補修剤等カー用品大手。ブランド名「ソフト99」。半導体関連を第2の柱に育成。
- ビーピー・カストロール(東証一部 5015)石油メジャーBPの子会社。カー用品店、ディーラー等の販路で自動車用潤滑油を販売。
さゆりんごは中国市場攻略の先兵?
▷さゆりんごは中国市場攻略の先兵?
日々のニュースや企業の適時開示には注目しているが、「経済×乃木坂46」「企業×乃木坂46」というような見方のできるものには特に注目している。そんな僕が今週気になった開示がソニーのBilibiliへの出資。
ソニーは中国の動画配信サービスBilibiliに4億ドルを出資。Bilibiliはニコニコ動画のようにコメント機能のある動画サービスの中国大手で、ソニーは約4年前から子会社の開発したゲームをBilibiliを通じて中国市場に配信してきたが、今回の出資でゲームのみならず、Bilibiliのプラットフォームを利用してソニーの持つアニメやゲームなどのコンテンツ配信を強化する方針。
Bilibiliが2009年にサービスを開始した当初、違法アップロードされた日本のアニメなどが若者ユーザーの間で人気となり急成長してきた背景があるため、日本のコンテンツの人気が高い。近年、日本のアニメ作品の放映権の購入を増やすなどして日本のコンテンツを強化していて、昨年10月からは乃木坂46の松村沙友理さんが中華料理を通じて中国語を学ぶ『沙友理的愛吃厨房(さゆりんごの食べるの大好きキッチン)』の配信も月1で行なわれている。
🍎松村沙友理🍎の、
— 乃木坂46 (@nogizaka46) 2020年2月17日
「#沙友理的爱吃厨房」
♯7が配信開始しました✨✨
まつたむに両サイドから食べさせられるさくら🌸撮影中もこんな感じでのほほんと進んでます💡
ぜひご覧ください🎶https://t.co/c1q4gya2EO pic.twitter.com/NV9OtaDRKK
enterprise-research.hatenablog.com
以前、『音楽のソニー』という記事にも書いたが、ソニーは音楽やアニメ、映画などのIP(知的財産)を強化し、それらのIPをプラットフォーマーに供給するというビジネスモデルへと変化しつつある。そうした観点からいうと、今回のBilibiliへの出資は、ソニーがプラットフォーマーと協調するこの戦略を中国市場で採っていくための橋頭保である。
また乃木坂46のファンとしての立場から見れば、乃木坂46というコンテンツを中国市場へと展開していくための重要なプラットフォームとなりそうだし、出資に先駆けてBilibiliに進出したソニーのIPである乃木坂46の松村沙友理さんは、まさにソニー、乃木坂46が中国市場を攻略するための先兵だったということになると思う。
▷今日の関連株
トヨタ自動車と品川駅
▷トヨタ自動車と品川駅
先日、京浜急行電鉄は品川駅西口(高輪側)に保有し、2020年中に解体予定であるホテル「SHINAGAWA GOOS」の跡地再開発の共同事業者としてトヨタ自動車を迎えると発表した。開発予定地2.5万平方メートルの一部を京浜急行電鉄がトヨタ自動車に譲渡し、ホテルや国際会議場、商業施設、オフィスなどを建設する予定。将来的にはトヨタ自動車が現在、文京区・飯田橋に置く東京本社を品川駅前へ移転させるのではとも言われている。
またトヨタ自動車は3月に、日本電信電話(NTT)と次世代通信規格「5G」を用いて渋滞解消や都市の効率化などを実現する「スマートシティ」の共同開発で資本業務提携しているが、NTTは資本提携で調達した2,000億円のうちの一部をNTTが品川駅東口に保有するオフィス街(通称 NTT村)に投じるとしている。
品川駅周辺は、高輪ゲートウェイ駅の開業や、羽田の国際化などで再開発機運が高まっているが、東日本旅客鉄道、京浜急行電鉄、西武鉄道、NTTなどの地権者ががバラバラに品川を開発したのでは魅力ある街を作るのは難しいだろう。実はそれらの事業者を結び付けるキープレイヤーがトヨタ自動車のなのかもしれない。トヨタ自動車にとっても2027年に中央リニア新幹線が開業すると、お膝元の名古屋駅と40分で結ばれることになる始発駅の品川駅は重要な街である。
▷今日の関連株
タイヤ交換の「堀」
▷タイヤ交換の「堀」
冬用タイヤから夏用タイヤへの交換の繁忙期を迎えているタイヤ取り付け店で短期のアルバイトをしている。
そこで1か月ほど働いていて感じるのは、意外とタイヤ交換というビジネスはウォーレン・バフェットの言う「経済の堀(Economic moat)」があるのではないかということである。「経済の堀」とは、敵の侵入を防ぐために城の周りに築かれる堀のように、競合他社が簡単には攻め入ることのできない要因のことである。
自分が働いているタイヤ取り付け店では、1年分のタイヤ取り付け工賃(夏用・冬用タイヤの着脱)とタイヤの保管料を前渡しで受け取るビジネスモデルをとっていて、おそらくこれが業界のスタンダード。常時、顧客の夏用か冬用どちらかのタイヤを預かっているため、顧客側からすると心理的・物理的にスイッチングコストが高く、他社への乗り換えが容易ではない。
また、雪が降る地域では、雪が降りだす前から冬用タイヤに履き替える必要があり、今年のように暖冬で雪が全く降らなくても北海道・東北・北陸などでは履き替えるのが一般的で需要は安定している、顧客のタイヤが磨り減ってくると利益率の高いタイヤの販売ができる立場でもある。
タイヤ交換は、機材や時間があれば家庭でできないこともない(代替品の脅威)し、ガソリンスタンドやタイヤショップなど競合プレイヤーが多い(同業者間の競争)事業環境ではあるのだが、意外と儲かるビジネスなのかもしれない。
▷今日の関連株
- ブリヂストン(東証一部 5108)タイヤ世界最大手。米Firestoneなどを買収。高利益率の特殊タイヤなどを強化。「タイヤ館」などタイヤ小売も手掛ける。
- 住友ゴム工業(東証一部 5110)タイヤ国内2位。「Dunlop」「Falken」ブランド。ゴルフ用品なども手掛ける。2015年米Goodyearとの提携解消
- 太平洋工業(東証一部 7250)タイヤバルブとバルブコア世界首位級。タイヤ空気圧監視システムも
- IDOM(東証一部 7599)2016年がリバーインターナショナルから社名変更。中古車買い取り首位。直営軸に「ガリバー」展開。小売り強化。
- イエローハット(東証一部 9882)カー用品販売2位。居抜き物件中心の出店戦略が特徴。グループ店向け卸売りと自社小売りが柱。
ノルウェー政府年金基金
▷ノルウェー政府年金基金
最近、テクマトリックスの上位株主に「GOVERNMENT OF NORWAY」がいるのを見つけた友達から「ノルウェー政府が株主の企業に特徴はあるか」と聞かれた。ノルウェー政府(正確にはノルウェー政府年金基金‐グローバルという名称)が優良な中小型株での運用を増やしていて、多くの日本企業の大株主として名前があがっていることは知っていたが、これを機に少しノルウェー政府年金基金について調べてみた。
ノルウェー政府年金基金は、北海油田からの石油収入を元手に、高齢社会、将来的な石油収入の減少、経済収縮などに備えて1996年に創設された基金で、2019年末時点で約123兆円を運用し政府系ファンドでは世界最大規模の運用額を誇っている。ちなみに日本国民の年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用額は168兆円。
アセットアロケーションは株式70.8%、債券26.5%、不動産2.7%で、株式については株式市場に大きな影響を与えないように「広く、薄く」多くの企業の株式を保有していて、日本では上場企業1,542社に605億ドル(約6兆5,350億円)を投資している。日本株の合計時価総額は約580兆円なので日本企業全体の約1%の株式を保有する大株主ということになる。
ノルウェー政府年金基金は全ての運用先をホームページで公開していて、個別銘柄の保有額、保有議決権の割合、株主総会での議決権行使の状況なども明らかになっている。これは見ているだけでも非常におもしろい。この辺の投資状況の透明性は日本のGPIFが見習うべき点でもあるだろう。
またノルウェー政府年金基金は日本の上場企業1,542社に投資しているが、「広く、薄く」投資しているため、保有割合が3.00%を超えるものは20社しかなく、その多くが優良な中小型株となっている。
今のように相場が乱高下していて、長期的な投資目線が求められる状況の中では、長期的目線で優良企業に投資しているノルウェー政府年金基金の投資先に投資するコバンザメ的方法がワークするかもしれない。
▷今日の関連株
製紙業界の火薬庫
▷製紙業界の火薬庫
今日は製紙業界5位の北越コーポレーション(2018年に北越紀州製紙から社名変更)の株価が+13%と急伸した。
北越コーポレーションは、大王製紙元会長・井川意高氏の「カジノ事件」後の2012年に井川家から大王製紙株の約20%を買い取り、大王製紙を持分法適用会社とした。一方で、両社の協業は上手くいっておらず、対立関係が長く続いている。そういった経緯の中で、大王製紙創業一族系の大王海運が北越コーポレーション株を5.26%まで買い増し、今日、大量保有報告書が提出されたことから、敵対的TOBなどの思惑から買いが入ったと思われる。
大王製紙は創業家の都合で、北越コーポレーションの持分法適用会社となったものの、売上高では「大王5,338億円>北越2,758億円」、時価総額でも「大王2,213億円>北越761億円」と、小が大を呑む形に不満を持っているのだろう。
製紙業界は、王子ホールディングス(2019年3月期 海外売上高比率31.9%)を筆頭に海外で稼ぐ体制に変化しつつあるが、国内の紙の需要が減少していく中でまだまだプレーヤーが多く、業界再編は不可避である。大王製紙ー北越コーポレーションの関係は一触即発、ここが動けば製紙業界の再編は一気に進むだろうし、まさに製紙業界の火薬庫的存在だ。
ちなみに北越コーポレーションは、時価総額2,213億円の大王製紙株を24.39%(時価525億円分)保有しているのに、時価総額が761億円にとどまっている。対立が続く大王製紙を諦めて株を売却すれば、その資金で成長分野に投資したり、株主還元することもできるし、大王製紙を子会社化することができれば、家庭紙や紙おむつなどの成長分野を手に入れることもできる。現状維持でも、大王製紙から年間10~20億円の持分投資利益を取り込むことができる。
業界再編の思惑があること。割安さ。新型コロナウイルスの影響も無さそうだし、北越コーポレーションには投資妙味を感じますね。