ドラッグストア戦国時代
▷ドラッグストア戦国時代
6月4日、北陸地方を中心に展開するドラッグストアチェーンのクスリのアオキホールディングスが食品スーパーのナルックス(金沢市)を買収すると発表した。ナルックスは石川県内で5店舗を展開するのみで、直近の売上高は48億円とそれほど大きくない。
この買収により、これまでドラッグストア事業一本でやってきたクスリのアオキに食品スーパー事業が加わる。だが、クスリのアオキは事業の多角化を志向しているわけではなく、この記事で指摘されているように、食品スーパーを買収することで食品、特に肉や鮮魚、野菜などの生鮮食品に関するノウハウを獲得し、ドラッグストア事業で生鮮食品の取扱いを強化しようとしているようだ。
ドラッグストア各社は、利益率の高い医薬品や化粧品で稼ぎ、それを原資に食品や日用品を値下げして集客するというビジネスモデルを採っている。福井県に本社を置き、石川県内にも積極出店を続けるGenky DrugStoresはその典型だ。2019年5月期の売上高に占める食品の比率は61.3%。生鮮食品を強化することで高来店頻度を達成している。また九州から北上を続け、ついに石川県内にも出店を始めたコスモス薬品も食品比率は56.3%とかなり高い。
クスリのアオキも2019年5月期時点で同比率は39.6%と低いわけではないが、北陸に攻め込む競合他社に対抗し、他のエリアで売上高を伸ばし続けるためにはやはり食品の強化は欠かせない経営課題ということになるだろう。
調べてみると、ドラッグストア業界8位のクリエイトSDホールディングスも今年に入ってから食品スーパーを買収している。ドラッグストア業界の飽和が近づく中で、各社とも動き始めている。いずれ、そう遠くない時期に、食品を強化したドラッグストアとスーパーの垣根がなくなり、大競争時代に入るのかもしれない。既に食品・生鮮食品で先行しているGenkyの今後、そしてそれを追い始めたクスリのアオキの動きには注目しておきたい。