大王海運の買い増し
▷大王海運の買い増し
製紙業界5位の北越コーポレーションの株式を着々と買い増している企業がある。大王海運とその子会社である川崎紙運輸、美須賀海運だ。
大量保有報告制度に基づき、上場企業の株式を5%以上取得した投資家は大量保有報告書を、その後は1%以上の保有増減があるたびに変更報告書を財務局に提出することが義務付けられているが、大王海運グループは北越コーポレーション株の保有が5%を超えた2020年3月23日に大量保有報告書を提出して以降も買い増しを続け、先日9月24日に提出した最新の変更報告書によると保有比率が7.26%となった。
買い増しを続ける大王海運について詳しいことは明らかになっていないものの、大王製紙創業家が実質的なオーナーとみられ、大王製紙と北越コーポレーションの間で対立関係が続いていることや、規模の小さい北越コーポレーション(時価総額701億円)が規模の大きい大王製紙(時価総額2,413億円)の株式24.3%を保有するという歪な資本関係であることから今後、敵対的買収や業界再編に繋がる蓋然性は高いように見える。
北越コーポレーションは、買収防衛策を導入しているため、現状では大王海運は北越コーポレーションの株式を20%以上保有することが困難であるが、2019年の定時株主総会では買収防衛策更新議案の賛成率が60.86%にとどまり薄氷の可決となっている。今後、さらに大王海運の保有比率が高まるようだと2022年の株主総会で買収防衛策を更新することは非常に難しくなる。
今年に入り北越コーポレーションの安定株主だった三菱商事の保有比率が19.35%から4.04%まで大幅に低下していることもあり、買収防衛策がなくなれば、規模の大きい大王製紙が北越コーポレーションに敵対的買収をかけることが可能になるだけでなく、北越コーポレーション(時価総額701億円)が大王製紙(時価総額2,413億円)の株式24.3%を保有するという歪な資本関係は投資ファンドなどの格好の標的となる。
いずれにせよ、大王海運の買い増しは今後さらに大きな問題に発展する火種となりそうだ。今後の大王海運の動向には注視が必要だろう。