製薬の分業化
太陽ホールディングス
普段、使わない地下鉄の駅で広告を見つけた。
自分は、ニッチな分野で高いシェアと高い収益性を持つBtoBメーカーが好きなので、太陽ホールディングスも大好物な企業。
太陽ホールディングスは、電子基板の表面を保護する緑色のインキ「ソルダーレジスト」で世界シェア6割超を誇るトップメーカー。
金融危機があった2009年や、歴史的な円高だった2011年、2012年でも営業利益率は10%以上を維持していて、直近の2018年は営業利益率21.7%を記録するなど、業界では高収益企業として知られる。
一方で、電子部品業界を顧客としていて、最終製品はスマートフォン、パソコン、家電などの電化製品になることから、それら最終製品の市場動向に影響を受けやすい。
また海外での売上比率が8割を超えるため、為替レートの変動などにも大きな影響を受ける特徴がある。
こうした中で、今、太陽ホールディングスは、ソルダーレジストに大きく依存する事業構造からの脱却を経営目標としている。
具体的には、「製薬事業への進出」
2017年に製薬子会社「太陽ファルマ」を設立し、本格的に医薬品製造事業に参入した。
世界経済の変動に左右されにくい医薬品製造に参入し、それを第2の収益の柱にしようという計画。
製薬の分業化
製薬業界では、スマイルカーブ現象が見られるとされている。
「スマイルカーブ現象」とは、電子機器産業などに見られる現象で、研究開発や商品企画といった上流のプロセスと、下流のアフターサービスで付加価値が高くなり、製造のプロセスでは付加価値が低くなるという現象である。
多くの成熟産業では、このスマイルカーブ現象が見られる。
製薬産業に置き換えれば、新薬の研究開発プロセスと、販売・アフターサービスのプロセスで高い付加価値が生まれているということになる。
今まで、日本の製薬会社は、自社で、研究開発から、製造、販売までの全てのプロセスを行ってきた。
しかし、近年、新薬を生み出すのが難しくなり、研究開発費が膨張している中で、大手の製薬会社の中には、利益率が低い製造部門や、特許切れの長期収載品や後発薬を他社に売却し、創薬プロセスに経営資源を集中させていく動きが見られる。
太陽ホールディングスは、製薬業界でこのような変化が起こっていることから、「現在の垂直統合型から水平分業へのシフト」が本格化するとみている。
そこで、太陽ホールディングスは、これまでレジストインキの製造で培った、 配合技術と分散技術という強みを生かせる、医薬品の、それも製造・開発に特化した部分に進出したわけ。
他社から、医薬品の製造を受託するCDMO(他社から委託を受け、医薬品開発・製造を代行する企業)になることを目指している。
製薬の水平分業化が進むことで、このCDMO市場は大きく成長することが予測されるため、様々な企業が参入してきている。
自分は、製薬業界にはあまり興味がなかったけど、「製薬の水平分業化」というテーマは追ってみる価値があるおもしろい流れだと思う。
今日の関連株
太陽ホールディングス(東証一部 4626)電子基板用レジストインキで世界首位。医薬品製造に参入。
シミックホールディングス(東証一部 2309)新薬開発の支援や、医薬品の受託製造を行う。
ニプロ(東証一部 8086)医療用器具の製造を行う。後発薬製造や医薬品の受託生産も行う。
アルフレッサホールディングス(東証一部 2784)医薬品卸国内首位。第一三共から長期収載品を譲受し、今後の再編の核になるか