南洋での日本の企業家の活動
中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している南沙諸島。
最近では、急速に海洋進出を進めている中国が岩礁を埋め立てて人工島を建設し、それに対して、アメリカが海軍艦艇を派遣する「航行の自由作戦」を行なったりしているところ。
この南沙諸島、1938年〜1945年の7年間は日本の領土でもあった。
それ以前の1921年から1929年まで、日本のラサ島燐礦という「リン(元素記号 P)」採掘の会社が操業していたりもした。
▼ラサ島燐礦
このラサ島燐礦という企業がおもしろい。
ラサ島燐礦は、1907年に沖縄県南東400kmに位置する無人島「ラサ島(正式名称は沖大東島)」で燐鉱石が発見され、その開発を行ったことから始まっている企業。
ラサ島は、サンゴ礁に囲まれた周囲4.5kmほどの島。
この何の変哲もないように見える島が燐鉱石の発見によって、脚光を浴びるようになる。
今でも燐鉱石は農業用肥料の原料として使われていて、当時も燐酸肥料の原料として海外から輸入されていた。
ラサ島燐礦の創業者で、農商務省で日本領域の肥料鉱物の研究を行っていた恒藤規隆が、退官後も私財を投じて、南方諸島の燐鉱石資源を探査していたところ、ラサ島で1907年に燐鉱石を発見し、1911年にその採掘を目的とした「ラサ島燐礦合資会社」を設立した。
ラサ島燐礦は、その後、ラサ島で燐鉱石が掘り尽くされる前に次の産地として、南シナ海の南沙諸島を調査し、1921年から南沙諸島の長島で燐鉱石の採掘を行なっている。
▼アホウドリ
アホウドリの生息地では、燐鉱石が採れることが多い。
鳥糞(鳥糞の堆積、鳥糞から溶け出た燐酸がサンゴ礁と反応したもの)が長い年月をかけて燐鉱石になるためである。
そしてラサ島燐礦の創業にも少し関わった企業家で、アホウドリの撲殺事業で、当時の長者番付に載るほどの巨利を得た玉置半右衛門というのがいて、
「今迄絶海の孤島に棲息し人間の恐ろしさを知らぬアホウドリは逃げることさえ知らず、隣の仲間が棍棒で殺されても平気で人間の側に寄って来た事であった。」『アホウドリ』藤沢格 著 刀江書院, 1967
というほど、警戒心が薄く、簡単に獲れるアホウドリを大量に撲殺し、その布団用の羽毛として販売した。
また玉置がアホウドリで莫大な資産を築いたことを知った人々は、1890年~1900年頃に一攫千金を夢見て、南洋の無人島に進出していった。
そうした活動が、小笠原諸島や尖閣諸島、南鳥島など、日本の領土の拡大にも寄与したらしくて、おもしろ見方だなと思った。
アホウドリを追った日本人――一攫千金の夢と南洋進出 (岩波新書)
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自分は、こういう戦前の日本のスケールの大きい企業活動が好きで、樺太、南洋諸島、満州、東南アジアなどでの日本企業の活動を調べていると楽しい。
次は樺太調べたいなあ。