北越コーポレーションの2022年3月期
北越コーポレーションの2022年3月期
2月15日で上場企業各社の決算発表ラッシュが終わり、今日からは一息つきながら、いつも監視している企業の決算をゆっくり確認していくつもりだが、早速おもしろそうな事実を発見した。
北越コーポレーションの「重要な後発事象」
中堅製紙メーカーの北越コーポレーション(3865)の第3四半期決算短信をよく見ると、最後のページに「重要な後発事象」として賃貸用不動産の譲渡が記載されているのだ。
この賃貸用不動産は、墨田区両国のオフィスビルで、来期2022年3月期決算に27億円を特別利益として計上する見込みだという。
北越コーポレーションは、この他にも2020年8月に大阪府吹田市の自動車教習所とゴルフ練習場の土地(66,085.61㎡)の譲渡も決めており、こちらも2022年3月期決算に約40億円の特別利益を計上する予定だ。
2022年3月期は、本業の紙パルプ事業で徐々に新型コロナウイルスの影響が薄れていくと思われ、営業利益を保守的に50~60億円、持分法適用会社の大王製紙からの持分利益が約40億円程度と推定し、ここに67億円の固定資産売却益が上乗せされるとすると、北越コーポレーションは、一時的要因が大きいとはいえ、2022年3月期に10年ぶりに過去最高益(過去最高益は2012年3月期の12,673百万円)を更新するのではないか。
株価を上げなければならない理由
北越コーポレーションは、こうした遊休不動産の売却だけではなく、新型コロナウイルスの影響を受け、大幅な営業赤字に陥っている今期は50億円超の有価証券売却益でその赤字を埋めている。「紙パルプ事業への経営資源の集中」との会社側の説明はもっともだが、一連の動きは資産の益出しを急いで進めているようにも映る。
捻くれた見方をすれば、そこには株価を下げられない事情もあるのだろう。それはコロナショックで株価が大きく下落した2020年3月以降、「大王海運」なる企業が北越コーポレーションの株式を8.1%まで急速に買い増しており、会社側としては買収防衛策として株価を上げておきたい(下げたくない)のではないか。
詳しいことは明らかになっていないが、大王海運は大王製紙創業家が実質的なオーナーではないかとされており、北越コーポレーション(時価総額94,027百万円)が大王製紙(時価総額355,772百万円)の発行済み株式の24.7%を保有している歪な資本関係に着目した投資を行なっているのだと推測される。買収防衛策を導入しているとはいえ、三菱商事という安定株主を昨年失った北越コーポレーションが敵対的買収に晒されるリスクは高まっている。
一方で、北越コーポレーションが遊休不動産や投資有価証券を売却して得たキャッシュの使い道も気になるところであり、いずれにせよ、来期は製紙業界の再編と、そのキープレイヤーとして北越コーポレーションに注目したいと思う。