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村田製作所株の値上がりの裏で

 村田製作所株の値上がりの裏で

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村田製作所(6981)の株価が上がっている。「iPhone12」は過去に前例のないほどの買い替えサイクルを迎えるとの見方や、5G対応スマホ、電動化の加速による車載向け需要の増加など、コロナ禍にあっても、セラミックコンデンサーには強い引き合いがあるようで、昨年末から上場来高値の更新を続けている。

先週15日の終値10,040円は、2020年3月末の5,472円から1.83倍だ。

収益性、成長性、財務基盤のどれを取っても文句のつけようがない素晴らしい企業でありながら、一方でPER33.99倍、PBR3.65と極端な割高感があるわけでもない。だが、バリュー投資家の自分としては買えない株価水準だ。

 間接的に村田製作所の株を買う

そこで考えたいのが、村田製作所株を保有している企業の株を買う、つまり「間接的に村田製作所の株を買う」という方法である。例えば、京都銀行(村田株1,578万株保有)や戸田建設(同541万株保有)の株を買うということだ。

だが、総資産に占める村田製作所株式の額の割合は、2020年3月末時点で、京都銀行で0.8%、戸田建設でも4.6%であり、これでは「間接的に村田製作所の株を買っている」とは言いづらい。

やはり最も「間接的に村田製作所の株を買っている」と言えるのは、何度かこのブログでも取り上げたモニターメーカーのEIZO(6737)の株を買うことのようだ。2020年3月末時点の総資産125,284百万円の18.0%に当たる22,659百万円が村田製作所の株式である。

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そして直近の値上がりで、これが41,575百万になっている。仮に2020年3月期末と資産内容に変化がないとすると、総資産の28.8%を村田製作所株が占める計算である。

 EIZO村田製作所株の保有目的を変更

EIZO村田製作所の株式をこれほど保有しているのは、村田製作所創業家EIZOの前身企業を設立したという創業の経緯からである。現在も取締役7人中、社長を含め3人が村田製作所出身である。

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コーポレートガバナンス報告書(2020年)より

一方で、取引関係はほとんどない。そうした実態に配慮したのか、EIZOは2020年3月期有価証券報告書から村田製作所株の保有目的を「特定投資」から「純投資」に変更している。電話でIR照会した際(2020年8月4日のブログ)は「片思い保有の位置づけを明確化するため保有目的を変更した」と(のことだったが、総資産の約3割を占める株を純投資目的で持つというのは、やはり無理があり、自分は近々売却するのだろうと見ている。300億円の売却益を得れば、さすがに村田製作所株と対称的に安値圏にある株価も動意を見せるのではないか。

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いずれにせよ、EIZOは、総資産の約3割が村田製作所株、村田製作所株と他社の株式を合わせると総資産の約4割が投資有価証券である。これはやはり過大な投資有価証券の保有だと言わざるを得ない。だが、収益性、成長性、財務基盤のどれを取っても文句のつけようがない素晴らしい村田製作所株を簡単に手放してしまうのはもったいない気もする。近々売却するにしても経営陣は難しい売却タイミングの判断が迫られそうだ。注視を続けたい。

 今日の関連株

  • EIZO東証一部 6737)PCや遊技機用ディスプレー専業メーカー。ヘルスケアや航空管制用途が拡大。欧州売上が大きい。
  • 村田製作所東証一部 6981)電子部品大手。世界トップのセラミックコンデンサーが主柱。原料からのセラミック技術に強み