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ESG投資への疑問

▷ESG投資への疑問

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今は猫も杓子も「ESG投資」、投資家も企業もESG投資を受け入れ、それを批判することなど許されないような雰囲気もある。

 

しかし、それほど業績も財務も悪くない電源開発(9513)が石炭火力をやっているためにPBR0.35倍まで売り込まれているのをみると、GPIFや従業員年金までもがESGに基づいて投資判断するのは、本当に委託者のためになっているのか疑問を持ってしまう。11月2日の日本経済新聞朝刊に「ESG投資、過信は禁物」というFinancial Timesのおもしろい記事が載っていた。以下、記事の重要な部分を引用する。

 

(ESG投資は)長期的な運用成績が市場平均を上回ることが立証されていないうえ、そもそも発想自体に難がある。

 遠い将来のある時点では、社会的な善と金銭的な利益が一致しなければならないのはその通りだ。ただこれは個人投資家には長すぎる時間だし、企業の経営計画が想定する期間ともかけ離れている

 

現実的な時間軸で考えると、ESG投資の対極にある反道徳的投資が最高のリターンを上げてもおかしくない。

投資が高収益を生む方法は2つある。成長余地が大きそうな銘柄に投資するか、割安な銘柄を探すかだ

(ESG投資により反道徳的企業から投資家が遠ざけられると)反ESG銘柄は下落して割安になるため、むしろこちらに投資する方がESG銘柄より長期的に高いリターンが得られる

 

企業がESGで高い評価を得ているかどうかは企業規模や株価モメンタム、収益力と同様、あくまで投資判断材料の一つだ。こうしたものは長期間、物色テーマにならないことがあるかもしれない。特定のテーマにこだわり過ぎればリターンは落ちる。 

 

良いことをして利益を得るという極めて楽観的な考え方が社会の実益になることはない。この考え方が役に立つのは運用会社が商品を売るときと、企業が厳しい選択を避けたまま自社の評価を上げたいときだろう。 

 

読んでいて「もっともだ」と思った。これら以外にもそもそもG(企業統治)の良し悪しについてはある程度の客観的な評価ができるとしても、E(環境)やS(社会)についてどうやって誰にでも納得のできる客観的な評価ができるだろうか。ESGスコアを評価する評価会社が乱立しており、評価基準が明確ではないという問題もある。

 

アメリカでは、ブッシュ政権オバマ政権、トランプ政権と、政権が変わるごとにESG投資の解釈が揺れ動いてきたという。アメリカで新大統領が選出されるのを機に、虎の子の資産や年金の運用先を選ぶ判断基準としてなにが適切なのか、自分自身もう少し考えてみたい。

 

▷今日の関連株

ESG投資は特に石炭関連銘柄への見方が厳しい。

  • 住石ホールディングス東証一部 1514)旧-住友石炭鉱業。国内炭から撤退し、出資先の豪州炭鉱からの石炭の輸入販売がメイン。採石事業なども行う。PBR0.44倍
  • 三井松島ホールディングス東証一部 1518三井鉱山系の旧-松島炭鉱。豪州での石炭生産、国内での石炭販売が主力。衣料、施設運営、飲料ストロー生産も行う。PBR0.28倍
  • 日本コークス工業東証一部 3315)旧-三井鉱山が2009年に社名変更。鉄鋼会社向けのコークス製造大手。産業機器も扱う。PBR0.42倍
  • 太平洋興発東証一部 8835三井鉱山系の旧-太平洋炭礦。輸入炭販売も行うが主力事業は不動産や老人ホーム運営など。PBR0.34倍
  • 電源開発東証一部 9513)2004年に民営化された電力卸会社。石炭火力発電と水力発電が主力。PBR0.35倍