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国際観光会館

▷国際観光会館

毎週、図書館で週刊金融情報専門紙『日経ヴェリタス』を読んでいるが「七転び八起き」というコラムがおもしろい。これは日経ヴェリタス創刊以来続く名物コラムで、毎週、凄腕の個人投資家の投資歴や投資手法を紹介している。

www.nikkei.com

8月9日号では50代の個人投資家「長野さん」を紹介していた。

 

長野さんは2000年頃に勤務先の外資系運用会社の拠点閉鎖により失業、それを機にそれまで培った運用経験を生かして専業投資家に転身した方だそうだ。元手6,000万円を染色・繊維加工のソトー信販大手のジャックス、不動産の国際観光会館などのPBRが低い割安株に投資し、現在では5億円弱まで資産を増やしているとのこと。

 

割安株に投資する長野さんの投資スタイルは自分と近いため、参考にしようと興味深くこの記事を読んでいたのだが、以下の引用の通り、長野さんが特に資産を増やした銘柄は「国際観光会館」だそうだ。聞いたことがない銘柄だったので調べてみた。

 

特に買い増した銘柄が、JR東京駅前の一等地にビルを構えていた国際観光会館だ。1990年代には土地所有者の旧国鉄と明け渡しを巡って訴訟になったが、筆頭株主である三井不動産(8801)が土地を買い取る形で和解が成立していた。大規模再開発が見込まれ、借地権を持つ国際観光会館の貸借対照表には"見えない"含み益が隠れていると読んだ。その後、三井不のTOB(株式公開買い付け)もあり株価は上昇。値上がり益で「億り人」に仲間入りし、自然豊かな地方に移住した。

 

「市場が注目していない『割安な宝』探す」、日本経済新聞、2020年8月11日

 

国際観光会館は、1951年に国鉄東京駅八重洲口前(現在のグラントウキョウノースタワー大丸東京店が入居)という超一等地を国鉄から借り、その土地にホテルや商業施設、飲食店などが入る複合施設「国際観光会館」を建てて2003年まで運営していた。土地所有者の国鉄が1987年に民営化されたのを境に、旧国鉄資産の処分が進められ、国際観光会館国鉄清算事業団から建物の撤去と土地の明け渡しを求められていた。

 

この際、借地権者(国際観光会館)に立ち退いてもらうためには、土地所有者(国鉄)が多額の立ち退き料を支払わなければならない。長野さんはこの帳簿には載らない借地権者としての価値に注目し、国際観光会館に投資したという訳だ。

 

2000年頃の国際観光会館の株価は150円~300円で、PBR0.8~1.6倍、時価総額は約50~100億円程度だったが、長野さんの読み通り、借地権の売却(2004年)や三井不動産による完全子会社化(2005年)により630円まで値上がりし、長野さんは億り人となった。

 

自分も賃貸等不動産含み益などの帳簿上に現れない含み益、資本関係の再編による値上がりを狙っている銘柄は複数あるので、国際観光会館のことはケーススタディとして頭の片隅に置いておきたい。

 

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