帝国「繊維」なのに防災商社
▷帝国「繊維」なのに防災商社
就活投資法とでも言うのだろうか。大学2年生の頃から興味を持った企業の会社説明会に行き、投資のヒントを探すということをしている。先日は帝国繊維という企業の会社説明会に行ってきた。帝国繊維は同じ旧安田財閥系企業のヒューリックの株を1,754万株(時価230億円)保有しており、総資産724億円の31.8%にも上るため、投資ファンドのスパークスグループや英系アセット・バリュー・インベスターズから売却するように毎年圧力をかけられていることで有名な企業だ。
実際どんな企業なのかと思い、説明会に行ってみたわけだが、なんと本社が日本橋高島屋三井ビルディング。日本橋の一等地に建つ地上32階のオフィスビルの15階に帝国繊維は入っている。しかも再開発によって2018年に日本橋高島屋三井ビルディングが建てられる前に帝国繊維はここに土地建物を保有していたようで、おそらく地権者として再開発後のオフィスの1フロアを得て自社保有している。
事業もなかなかおもしろく、明治20年代(1887~1897年)に本格的に栽培されるようになった麻はその丈夫な特性を生かして帆布や軍服、消防ホース、郵便用郵袋などに用いられたが、日清戦争後の特需反動で需要が減少。それに対応するため、各地の製麻会社を合同、設立されたのが帝国繊維の前身となる帝国製麻である。安田善次郎がこの合同に尽力したため、帝国製麻は安田財閥系企業として歩んできた。
戦後、帝国製麻は安田財閥系企業ということで財閥解体に遭い、また合繊繊維に押しやられ、麻の需要が減少、業績不振を不動産や保有株式の売却で食いつないできた辛い時代もあったようだ。
しかし、麻の丈夫な特性を生かして戦前から消防ホースを製造してきた帝国繊維の販売子会社が顧客からの要望に対応して他社の防災製品の取扱いを始め、繊維メーカーから次第に防災関連商社として転換していく。
特に阪神大震災以降、様々な防災機器や救助工作車が各地の消防署に配備されるようになり、帝国繊維は前年まで続いた6期連続の営業赤字から脱却、社名に「繊維」が入っているが現在は防災専門商社として成長を続けている。
地震、台風、水害、テロ、原子力事故など、災害という逃れられない事象への備えがなくなることはなく、官公庁への売上比率が大きいことから新型コロナウイルスの影響もそれほど大きいとは思えない。総資産に占める現金、有価証券・投資有価証券などの金融資産の割合が63.6%にも上り、今後株主還元を強化する可能性もある。
投資先としておもしろそうだし、最近買ったビオフェルミン製薬のように急落したタイミングでちゃんと買えるように帝国繊維の株価も監視しておきたい。