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伊藤園第1種優先株式

伊藤園第1種優先株式

証券コードは通常4桁だが、5桁の証券コードの銘柄が一つだけ存在する。それが証券コード25935「伊藤園第1種優先株式」である。(ちなみに伊藤園普通株式証券コード2593)

 

株式は本来、「利益請求権(配当を受ける権利)」「残余財産の請求権」「議決権」の3つの権利を併せ持つ。優先株式はそのうちの「議決権」がない代わりに、「利益請求権」「残余財産の請求権」を優先的に請求できる株式だ。経営危機に陥った企業などで優先株を発行する企業自体は少なくない(2012年東京電力HD、2017年日本板硝子など)が、優先株が上場していて、株式市場で価格が付き、自由に売買できるのは伊藤園第1種優先株式だけである。伊藤園は株主構成を変えずに市場から資金を調達することを目的に、2007年に国内で初めて優先株式を上場させた。配当が普通株式の1.25倍、株主優待も貰えること、議決権が無いことでどのような株価になるのかが当初は注目された。

 

しかし伊藤園第1種優先株式が上場してから約13年が経つわけだが、未だに認知度はそれほど高くなく、投資家の優先株式への評価も定まらない。伊藤園普通株式(2593)と伊藤園第1種優先株式の株価の開きは2007年~2015年までは優先株式普通株式の株価の0.7倍程度の評価であったが、2015年以降、その開きが年々大きくなっている。足元では普通株の3分の1ほどの評価しかされていない。

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普通株式優先株式の株価の開きが起きる要因としては、

  1. 議決権が無いため、機関投資家が買わない。
  2. 優先株式流動性が低く、敬遠されている。
  3. 優先株式の存在が投資家に認知されていない。
  4. TOPIXに組み入れられていないため、日銀や投資信託が買わない。

などパッと思いつくだけでもこれだけあるため、おそらくこれからも普通株式優先株式の株価の開きは大きくなっていく方向だと思う。しかし優先株式については小さく注記があり「一定の事象により当社が普通株式を対価として1:1の比率で優先株式を取得することがあります」としている。

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つまり「伊藤園M&Aされる場合」「伊藤園TOBされて買付者が50%超を保有することになる場合」「優先株式上場廃止になる場合」は優先株式普通株式に1:1で転換される。

 

議決権がないという特殊な株式であって、前例や比較対象がないために割高割安の判断がつきにくいところはあるが、株主優待と配当を貰いながら、あわよくば3倍も株価が高い普通株に転換されるのを期待しながらのんびり投資するというのもアリなのかもしれない。

 

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