『半沢直樹』と日本企業
▷『半沢直樹』と日本企業
7月19日から『半沢直樹』の新編の放送が始まる。それに先立ってTBSでは2週に渡って2013年に放送された『半沢直樹』のダイジェスト版を再放送している。7年前はかなり熱中して観ていたので懐かしく感じる。今週の日曜日は第一部・大阪西支店編で、東京中央銀行西大阪支店の融資課に勤める半沢が計画倒産した西大阪スチールから融資した5億円を回収するというストーリーだった。
そして来週の日曜日に放送されるのは、半沢が大阪西支店から東京本店に栄転してからの第二部・東京本店編だ。東京中央銀行の大口融資先である伊勢島ホテルが株式の運用失敗で120億円の損失を出して経営危機に陥り、半沢が経営再建に奮闘する話になっている。
株式の運用失敗で経営危機に陥る伊勢島ホテルには、モデルとなった特定の企業があるわけではないと思うが、かつてバブル期には「財務テクノロジー(財テク)」という言葉がもてはやされ、伊勢島ホテルのように多くの日本企業が株式や債券などに投資を行ない、そしてバブル崩壊とともに巨額の運用損失を出した時代があった。例えばタテホ化学工業(国債先物で200億円損失、債券市場が大混乱に)、鉄鋼商社の阪和興業(当時「財テクのハンワ」として有名、後に計4,000億円損失)などが有名だが、意外なところだとサンリオやヤクルト本社も財テクに精を出していた。
サンリオと言えば、「ハローキティ」に代表される、キャラクターの版権ビジネスを手掛けていることで有名な企業だ。サンリオ自体の企業イメージにも「ハローキティ」のかわいらしいイメージが付いている人も多いと思うが、その歴史を遡ると、そのイメージとは裏腹に、バブル期には社長の指揮のもと、銀行借入や社債などで調達した資金を株式や特定金銭信託で大規模に運用し、営業利益に匹敵する運用収益を得ていたりした企業なのである。
1989年12月29日に日経平均株価が終値ベースの最高値38915.87円を付けたのをピークに、翌年からバブルは崩壊していき、財テクを行なっていた企業の多くはその処理が経営の重荷となっていく。バブル崩壊後の日本企業が設備投資に慎重で、資産を現預金という形で持ちたがる要因の一つがこうした財テク失敗のトラウマからだろう。
現在、財テクを行なっている上場企業はほとんどないが、金融緩和による低金利下で、余裕資金を有価証券などでの運用に回すというのは合理的でもある。現に光通信などの「世間からの評判」を気にしない企業はそうした動きを活発化させている。
7月19日から始まる新編の『半沢直樹』は「敵対的買収」の話らしい。徐々にバブル崩壊後のトラウマから脱し「世間からの評判」を気にせず、敵対的買収や財テクなどに日本企業が動き始めている現状と照らし合わせながら『半沢直樹』を観ていきたいと思う。