純投資目的に変更した理由は?
純投資目的に変更した理由は?
2009年の法改正により、定時株主総会前の有価証券報告書の提出が可能になったが、多くの上場企業は定時株主総会終了後に有価証券報告書を提出することを慣例としている。モニターメーカーのEIZOも6月24日に株主総会を開催し、決算報告、取締役の選任を終え、翌6月25日に2020年3月期の有価証券報告書を提出した。
株主総会には行けなかったが、EIZOは投資先であるので、有価証券報告書を眺めていると大きな発見があった。これまで「特定投資株式」として保有していた村田製作所、富士ソフト、エクセルの株が「純投資目的」に変更されていた。特に注目したいのが村田製作所。EIZOは歴史的経緯から村田製作所との繋がりが深く、2002年の上場以前から村田製作所株を414万株(時価226億円)も保有している。同社株はEIZOの総資産の約2割を占めるため、純投資目的に変更した理由は無視できないところだ。
- 「特定投資株式」・・・経営参加や営業関係を強めることなどを目的としている株式投資。政策保有株式とも。
- 「純投資目的」・・・株式に対しての純粋な投資という意味であり、株式値上がりの利益や配当金の受け取りなどによっての利益確保を目的としている投資のこと。
「特定投資株式」「純投資目的」については以上のような意味を持つので、その言葉の通り捉えるならば、「村田製作所と関係を維持・強化するために株式を保有してきたが、今後は株式値上がり益や配当収入を得ることを目的としての保有とする」ということになる。
純投資目的に変更した理由の一つとしてまず考えられるのが、今後の売却だ。村田製作所との取引はEIZOの年間売上高の0.1%未満であり、営業関係を強めるために株式を保有する合理性は低い。合理性を説明できない政策保有株は機関投資家からの評判が年々悪くなってきていることもあり近々売却する予定なのではないか。売却する場合は、推定200億円近い投資有価証券売却益が計上される可能性がある。その資金を利用して成長のための設備投資を行なったり、自社株買いや増配を行なうかもしれないので、これは株主としてはポジティブ。
もう一つの理由として考えられるのは、特定投資株式として保有していると、有価証券報告書に「保有株数」「保有目的」「保有で得られる効果」などを個別開示しなくてはならず、事業上の関係性が薄い村田製作所株を226億円も保有していると投資家から保有合理性の無さを指摘される可能性がある。なので、個別開示の必要がなく、政策保有株でもない「純投資目的」に分類し、投資家の目から遠ざけようとしているのではないか。これは開示姿勢の消極性から言うとネガティブ。ちなみにEIZOは、コーポレートガバナンスコードの「原則1-4」(政策保有株について)をコンプライしていないため、今後、原則1-4をコンプライするための布石である可能性もある。
現時点では、自分は純投資目的に変更した理由は「売却するため」が70%、「開示が面倒だから」が30%くらいではないかと考えている。上記の通り、売却した場合には推定200億円の投資有価証券売却益が計上されるため、株価は急騰するはずだ。1年以内に何らかのアクションがあると思われるが、何もないようなら来年の株主総会で「純投資目的に変更した理由は?」と質問してみようと思う。