住友不動産の持ち合い
▶住友不動産の持ち合い
戦後、財閥系企業が敵対的買収を防ぐ目的で始まり、日本企業の長年の慣習だった株式持ち合い(政策保有株)の解消が近年進んでいる。バブル崩壊後の保有株への時価評価導入などで少しづつ持ち合い解消が進んできたが、2014年にスチュワードシップ・コード、2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入されたことが大きい。安定株主がいることで企業のガバナンスが緩みかねなかったり、政策保有株を保有する効果が不透明であることことから、外国人投資家を中心とした批判の声も無視できなくなってきている。
しかしそんな状況で逆に住友不動産は政策保有株を増やしている。
住友不動産は全221銘柄、総額4,125億円もの政策保有株を保有していて、逆に持ち合い先は住友不動産の発行済み株式数4億7,608万株の約30%にあたる約1億5,000万株を保有している。
住友不動産がここまでして持ち合いを強化している理由として、この記事では「買収防衛策」を維持するためだと説明している。住友不動産は自己資本1兆2,081億円に加え、不動産含み益2兆4,652億円を有しているが、一方で2月4日現在で時価総額は1兆9,471億円に留まっているため、買収の標的になりやすい。住友不動産は敵対的買収への脅威が高まった2005年に買収防衛策を導入、以後3年おきに株主総会で買収防衛策の継続を決議しているが、2019年は賛成割合が55.15%と可決ギリギリになっている。
持ち合いも買収防衛策も必ずしも悪いものではないけれど、それがどう株主の利益に結び付くのか説明できないようだと、2022年の株主総会で再び買収防衛策を諮ったとき、おそらく否決されるだろう。信頼される経営、自社株買い・配当によって自社に見合った株価を付けてもらうことが最も買収防衛策になるという事実もそのとき突きつけられると思う。