ラピスラズリの青

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砥石のディスコ

▶砥石のディスコ

あけましておめでとうございます。2019年3月に書き始めたこのブログ、昨年は思っていたよりも多くの人が読んでくれましたが、2020年もたまに弊ブログを覗いていただけるとありがたいです。よろしくお願いします。

 

さて、この2020年はどんな年になるか想像してみると、まずはなんといっても東京オリンピックパラリンピックの開催というメインイベント抜きには考えられないだろう。そしてそれと並ぶビッグイベントは、11月に行なわれるアメリカ大統領選である。大統領選を前にトランプ大統領が「中国叩き」を展開していることが2019年の景気の減速感の大きな原因でもあった。

 

そして2019年の景気減速のもう一つの要因はシリコンサイクル半導体需要の循環)が下降局面にあったこと。半導体業界では約4年の周期で需要が循環しており、直近では2016年後半から2018年初めまでの2年間で需要が拡大、2018年後半から需要が減退する局面に入っている。周期的に言えば、2020年はシリコンサイクルが底を打ち、半導体需要が拡大する局面に入る年になるはずだ。

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「だいたい2年おきに半導体需要の底とピークが訪れる」ソニーフィナンシャル、Economic Data Watch

主要な半導体関連株ははやくもシリコンサイクルの底打ちを織り込んで、上昇し始めている。

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半導体業界には好きな企業が多いが、特に好きなのがディスコ。一般的にはあまり知られていないが、半導体切断装置で世界シェア7割を有し、製造業では異例の営業利益率26.2%をたたき出す超優良企業だ。半導体の微細化が年々進み、ディスコの得意とする「切る」「削る」「磨く」の重要度が高まる中で業績を伸ばしてきている。

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「シリコンサイクルの影響を受けながらも成長を続けている」

歴史がおもしろい点もディスコの魅力だ。ディスコは、砥石メーカーが集積していた広島県呉市で1937年に第一製砥所として創業した。呉には海軍工廠があり、そこからの受注を見込んでの創業だった。しかし後発メーカーであった第一製砥所は思うような受注ができず、1941年に精密加工用砥石を得意とする稲根本製砥所を買収し、同分野に経営資源を集中する方針に転換。以後は万年筆のペン先を精密加工するような極薄砥石で成功を収め、1968年には半導体シリコンウエハの切断に使うさらに薄い砥石の製造を実現し、半導体分野へ進出した。

 

しかしシリコンウエハの切断に使う砥石は、半導体業界からの評価は高かったものの、受注は低調。なぜかというと、ディスコの砥石を上手く使いこなせる加工装置が存在しなかったためだった。

 

この事態に対し、ディスコは砥石にとどまらず、自社の砥石を使用できる加工装置の製造を開始。砥石の発売から7年後の1975年に加工装置を完成させた。

 

マーケティングの有名な格言に「ドリルを買う人はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい」というものがあるが、優れた加工ツールの製造にとどまらず、加工装置まで自作することで顧客の切る、削る、磨くに対する要求に応えてきた歴史こそがディスコの競争力の源泉である。

 

AI、IoT、5Gなどを支えるのは半導体である。その半導体生産を支える縁の下の力持ち、ディスコは2020年どのような値動きをするのか注視しておきたい。

 

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