前田道路の焦土作戦
▶前田道路の焦土作戦
前田道路に対する前田建設工業の敵対的TOBの動向がおもしろくなってきた。前田建設工業は前田道路の賛同を得ずに1株3,950円でTOBを開始していたが、これに前田道路が対抗。前田道路は1株650円、総額535億円の特別配当を行ない、保有している現金631億円(2019年12月末時点)の大部分を吐き出すことで、前田建設工業にとって前田道路を買収する魅力を低下させようとしているようだ。この買収防衛策は、買収側が支配権を得る前に、魅力的な資産を失くしてしまい、魅力のない会社にしてしまう作戦であることから、クラウンジュエル(王冠から宝石だけ外してしまう)や焦土作戦(戦争で敵に占領される前に利用価値のある施設を破壊する)と呼ばれる。
前田道路は1930年に高野組として創業した道路舗装工事の名門だったが、過大投資による経営悪化で1962年に経営破綻、前田建設工業が同社を支援し、社名を前田道路とした経緯がある。そうした経緯から独立心が高く、過去に破綻した反省から過剰に内部留保を確保する傾向にあるのかもしれない。しかし、これまで24%という曖昧な出資比率で前田道路をグループ化していた前田建設工業、そして安定株主に守られながらキャッシュを溜め込んできた前田道路、そのどちらの姿勢にも歪さがあり、今回の状態に陥る条件を作り出していたと思われる。
気になるのは、①果たして前田建設工業のTOBは成立するのか、②前田道路側の1株650円配当が4月14日の臨時株主総会で可決されるのかどうか、という2点だ。
➀の前田建設工業のTOBは上限が51%、下限はないので、このままTOB継続なら成立自体はする。焦点は前田建設工業側がTOBを撤回するかどうか。
➁の特別配当については、4月14日の臨時株主総会の動向次第だが、議決権の24.68%を保有する前田建設工業は当然、特別配当に反対するので、残り25.32%の株主が反対すれば、特別配当は否決される。鍵を握るのは議決権の36.0%を持つ外国人投資家の動向で、とりわけ12.00%を保有する英国の物言う株主「シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ」の存在が大きい。シルチェスター等外国人投資家からすると、一時的な株価上昇にしかならない特別配当よりも前田建設工業のTOBに応募する方を選ぶのではないか。
僕は、前田建設工業のTOBが成立し、特別配当が否決される可能性の方が高いと見ている。それに仮に前田建設工業がTOBを撤回し、特別配当が可決されたとしても、コンセッション事業を強化していて2016年から愛知県の有料道路も運営している前田建設工業は再度、条件を見直してTOBに再挑戦してくる動機があるように思える。とすれば、3,390円で買えば、どちらに転んでも大きな損はないのではと思ったり。緊迫の臨時株主総会というのもおもしろそうだし。
4月14日の臨時株主総会に行くことになったらまたブログに書きます。