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金沢駅のドル箱

金沢駅のドル箱

2019年12月29日の北國新聞に載っていた『金沢駅「ドル箱」で攻防』という記事がおもしろかった。

 2023年春の北陸新幹線敦賀開業に向け、IRいしかわ鉄道金沢市)は在来線金沢駅舎の土地取得を目指し、年明けにJR西日本との交渉を本格化させる。土地を入手できれば「金沢百番街」の運営会社から年間1億円超が見込まれる借地料が入り、将来の赤字圧縮につながるからだ。ただ観光客であふれる「ドル箱」の地面を手放すことにJRは慎重姿勢を崩さず、交渉は激しい攻防が避けられそうにない。

 

 金沢駅舎は新幹線部分と在来線部分に分かれている。15年3月の北陸新幹線開業時、IRは在来線部分の駅舎をJRから取得したが、土地(約1万9600平方メートル)はJR所有のままとなっている。JRは金沢百番街を運営する「金沢ターミナル開発」から借地料を得て、同社には各店のテナント料が入る仕組みとなっている。

 

 在来線部分の土地について、IRは新幹線と在来線の経営分離の観点から、敦賀開業後は自社に移るとみている。担当者は「並行在来線の鉄道用地であり、IRの物になるのが自然な姿だ」と話し、相応の額で譲り渡されるべきだとする。

 

 IRは敦賀延伸に伴い、経営区間加賀市まで延びて現在の3.5倍となり、23年から10年間は計87億円の赤字になるとの試算がある。ドル箱の土地を手に入れれば、借地料をはじめ、屋上駐車場の料金収入も受け取れる。資産はこの収入を反映しておらず「IRにとって、のどから手が出るほど欲しい土地」(沿線関係者)となる。

 

 一方のJRは態度を明確にしていない。担当者は、金沢百番街が在来線と新幹線の高架下にまたがって位置すると強調。仮に在来線の土地を譲れば、借地料をどう分け合うか、新たな課題が生じるとし「IRとは話し合いを始めたばかりだ。現段階ではどのような形になるか分からない」と慎重な言い回しに終始する。

 

 富山駅は15年3月の金沢開業に合わせ、あいの風とやま鉄道富山市)が在来線駅舎の土地をJRから取得した。ただ富山駅の場合は当時、在来線の高架下に商業施設がなく、土地の所有を切り離しやすい事情があったという。

 

 JR東日本管内の在来線長野駅は駅舎、土地共にJRが所有している。長野県などが出資する第三セクターしなの鉄道長野市)の関係者は「駅や土地はもともとJRの物。取得させてほしいという交渉はしていない」と明かす。

 

石川県の沿線関係者からは「1日に2万人以上が乗車する金沢駅は他県の駅と事情が違う。JRは利益の出る土地は手放さないのではないか」との声も漏れる。IRがどれだけ優位な条件を勝ち取ることができるか、「地域の足」の経営安定に向けて大きな鍵となる。

 

北國新聞、2019年12月29日、『金沢駅「ドル箱」で攻防』

 

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IRいしかわ鉄道が取得を目指す土地からは金沢百番街のテナント収入や駐車場料金が得られる。」

 鉄道行政には詳しくはないが、JRが新幹線開業後は経営が困難だとして在来線を分離するのであれば、在来線に付属する資産を完全に切り離すのは当然のように思える。富山駅では在来線駅舎、土地ともに並行在来線側に経営分離している前例があることからも、これはIRいしかわ鉄道側に譲渡される可能性が高いものと考えている。

 

IRいしかわ鉄道は、石川県が約7割を出資しているため損失が出ればその穴埋めに税金が投入される可能性がある。2023年春の敦賀延伸、その先の大阪延伸などに向けて、石川県、IRいしかわ鉄道JR西日本などのステークホルダーがより良い鉄道のあり方について十分議論していくことが重要である。

 

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