銀行系不動産
▶銀行店舗
3月6日にみずほフィナンシャルグループが6800億円の損失を発表した。
6800億円の損失の内訳は
- 銀行店舗の統廃合に関わる固定資産の減損 400億円
- 預金口座などの管理を行う「勘定系システム」の減損 4600億円
- 外国債券の評価損の処理 1800億円
ということらしい。
銀行店舗に関しては、低金利の長期化や、現金を使わないキャッシュレス決済の普及で、銀行店舗の稼ぐ力が低下していることが背景にある。
▶みずほ系不動産会社ヒューリック
今回、取り上げたい企業はヒューリック。
みずほFG系の不動産会社で、不動産業界では、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産HDなどに次ぐ規模の会社。
ヒューリックはもともと「日本橋興業」という社名
日本橋興業は、旧富士銀行(現‐みずほ銀行)の主要な店舗が入居するビルを保有・管理することを目的として1957年に設立された。
今でもそうだけど、銀行店舗は大都市の目抜き通りなど、立地条件の良い場所にあるから、不動産事業の発展が期待できた。
一方で、当時は大蔵省の通達により、自己資本の40%までしか金融機関は不動産を保有できず、不動産事業の兼営も禁止されていた。
そこで、銀行各行は不動産会社を別会社として設立した。
日本橋のビルを最初に富士銀行から取得したから「日本橋興業」。
その後も、次々に富士銀行の支店を取得して、オフィスビルに改装したりしながら成長してきた。
支店を取得するだけじゃなく、千秋商事、芙蓉開発、昭栄といった富士銀行系不動産会社も吸収したりした。
今でも、ヒューリックが保有するビルは「ヒューリック〇〇ビル(旧〇〇富士ビル)」とかいう表札が立ってて、「ああ、ここは旧富士銀行の支店だったのか」とわかっておもしろい。
▶昭栄
ヒューリックが2012年に吸収した昭栄。なかなかおもしろい歴史を持ってる。
昭栄は1885年に長野県岡谷(現‐岡谷市)で設立された「器械製糸(後に山十製糸に改称」に源を発する。つまりもとは製糸会社。
その後、山十製糸は1929年に手形不渡り処分を受け、倒産。
安田銀行(後の富士銀行、現在のみずほ銀行)が山十製糸の資産を受け継ぎ、全額出資で1931年に新設したのが昭栄製糸。
昭栄製糸は戦時中の経済統制や、戦後の特需景気、高度経済成長期を経て、
1969年には製糸工場跡地を生かした土地建物の売買・分譲を事業目的に追加。
1995年には製糸事業から撤退し、近年は不動産の賃貸と有価証券運用を主な事業にしていた。
合併前の2010年3月期の昭栄。
2011年度に保有資産の評価損を計上したことで、単独での事業存続が困難になり、同じ旧富士銀行系だったヒューリックに合併を打診、2012年に合併した。
昭栄のような製糸・紡績会社は広大な工場跡地をショッピングセンターなどに転換する企業は多かったりする。
▶今日の関連株
ヒューリック(東証一部 3003)‐ 旧富士銀行系の不動産会社
ユニゾホールディングス(東証一部 3258)‐ 旧日本興業銀行系の不動産会社