パッケージソフト開発会社への投資
▷パッケージソフト開発会社への投資
1.「わからないもの」への投資
自分は「わからないものへの投資はしない」ということを投資方針の一丁目一番地に据えている。投資指標や財務諸表から分析して素晴らしい企業であったとしても、馴染みのない、事業の理解が難しい企業であれば、安心して長期的に投資するのは困難だろう。
具体的には、自分の頭では理解が難しい、「わからないもの」として、研究開発型の製薬会社やバイオベンチャー、半導体関連、そしてシステム開発会社などがあり、それらの業種の会社は四季報が出ても、決算が出てもあまり注意せずにサッと斜め読みする程度でやってきた。
だが、システム開発会社と一括りに「わからないもの」として敬遠してきたパッケージソフト業界について、上司からビジネスモデルを教わる機会があり、また自分でも同業他社を分析してみたところ、非常におもしろい企業が多いということを発見した。
これまでの自分の「わからないものへの投資はしない」という投資方針は、聞こえはいいが、実はわからないものを理解しようとする姿勢を放棄していて、そこには自分の知らない素晴らしい投資対象が転がっているのではないかと思うようになった出来事だった。
2.実は優良企業が多いパッケージソフト業界
「パッケージソフト」とは、CDやDVDなどの記憶メディアに記録され、それをPCなどにインストールすることで、業務効率化のための特定の機能が利用できるようになるソフトウェアのこと。大企業であればNTTデータや富士通といったシステム開発会社に依頼して自社に最適なシステムを構築するが、自前のシステムを構築するほどではない中堅・小規模の企業が業務効率化などの目的で導入することが多いという。
つまりパッケージソフトは、標準化されたシステムであり、開発のために初期投資を要するものの、開発費を回収すれば、CD・DVDの製造コストと販管費程度しかかからず、驚異的な利益率をあげることが可能なのだ。
その傾向は、国内外の大手が参入してこないようなニッチな分野に特化している企業に特に顕著に見られ、企業の固定資産管理に特化したソフトを開発しているプロシップ(東証一部 3763)、信用金庫向けのリスク管理等のソフトを手掛ける情報企画(東証二部 3712)、建築物の設計用CADに特化したパッケージソフトを開発する福井コンピュータホールディングス(東証一部 9790)などはいずれも3割近い利益率を安定して維持している。
これらの企業の製品は、顧客の業務に深く浸透しており、簡単に乗り換えることができないため、競合に対する参入障壁となるだけではなく、乗り換えコストの高さが価格交渉力にもつながっている。
3.まとめ
- 「わからないものへの投資はしない」は、知らず知らずのうちに理解する努力を放棄している可能性。
- パッケージソフト開発会社の中には、開発に要した初期費用を回収し、驚異的な利益率を誇るところも少なくない。
- 特定のニッチな分野に特化しているパッケージソフト開発会社は特にその傾向が強い。
- 金融機関のシステムや企業の会計作業、中小企業の業務に深く浸透しているパッケージソフトは簡単に乗り換えることができず、競合他社に対する参入障壁となっている。
- 顧客の業務に深く浸透しているため、価格交渉力も高いことが多い。
以上のように、パッケージソフト業界について少し調べただけでも、非常に興味深い業界であることが確認できた。食わず嫌いせず、様々な業界の企業を調べるという姿勢は意識していきたいと思う。
▷今日の関連株
とりあえず月4回更新を目標に
とりあえず月4回更新を目標に
3月で大学院を無事に修了、のんびりと過ごした6年間の学生生活も終わり、今月からはついに社会人として働き始めた。「働いている」と言っても、今のところは、座学の新入社員研修であるため、それほど生活に大きな変化もないが、それでも社会人として働く中で、学生の頃には見えなかった、新たな目線から企業や市場を見ることができそうな気がしている。
ブログの更新回数は減ってしまうだろうが、そうしたアイデアや思考を文章化して、アウトプットするトレーニングとしても、これからは最低月4回、年間50回程度のブログ更新を目指してやっていきたい。とりあえず、来週から本格化する企業の1~3月期の決算発表に関連していくつか書くことになると思う。
▷4月の注目決算スケジュール
4月20日(火)・・・Genky DrugStores(9267)
4月21日(水)・・・ジャフコ(8595)
4月22日(木)・・・日本電産(6594)、ディスコ(6146)
4月23日(金)・・・アクシーズ(1381)
4月26日(月)・・・JFEシステムズ(4832)、アイチC(6345)、富士古河E&C(1775)
4月27日(火)・・・メタウォーター(9551)、ファナック(6954)、JR東海(9022)、東京エネシス(1945)、トランコム(9058)
4月28日(水)・・・JPXG(8697)、新京成電鉄(9014)、積水樹脂(4212)、JR東日本(9020)、北國銀行(8363)、信越化学工業(4063)、モリタHD(6455)、前田工繊(7821)、日本鋳鉄管(5612)、村田製作所(6981)
4月30日(金)・・・ 太陽HLD(4626)、ダイビル(8806)、日本証券金融(8511)、愛知電機(6623)、西川計測(7500)、高松機械工業(6155)、東京エレクトロン(8035)
サイボーの魅力
サイボーの魅力
会社四季報春号が先日3月19日に発売され、最近は気になった企業をリストアップ・分析しながら読み進めることに1日の大半の時間を割いている。じっくりと読み進めているため、まだ4000番台だが、この時点で最も気になる企業がサイボー(3123)だ。
企業名からは何をしている企業なのか読み取れないが、サイボーは旧-埼玉紡績から1967年に社名変更を行なった繊維関連企業である。「繊維」というと斜陽産業で、全く成長できなそうなイメージだろう。しかしサイボーには投資対象としての魅力が隠されている。
実質は不動産賃貸業のサイボー
サイボーは、1948年に紡績会社として創業し、現在も売上高では繊維事業が全体の約6割を占めている。ただ繊維事業は人件費などが重く、過去20期でセグメント黒字は僅か3期(2011~2013年)と不振が続いている。
一方で、収益源となっているのが、かつての繊維工場跡地を転用した、不動産活用事業(商業施設の賃貸)である。不動産活用事業では、埼玉県川口市内にあるイオンモール川口前川の土地・建物をイオンモールに対して賃貸しており、同事業がほぼすべての利益を稼ぎ出している。
また、こうした不動産活用事業で保有している不動産の時価評価は、2020年3月期末時点で240億円にも上っており、簿価118億円との差額122億円が含み益となっている。3月22日時点で、サイボーの時価総額は66億円に過ぎず、2022年3月期には同じく埼玉県川口市内にイオンモール川口が新規開業、秋には賃貸用医療施設も開業する見込みであることから、今のサイボーの株価はあまりにも魅力的というわけである。
実質的な純資産は約240億円なので、イオンモールが無事開業する頃には、控えめに見ても120~150億円くらいの時価総額があってもいいのではないかと考えている。
今日の関連株
【決算ウォッチ】スバル興業 2021年1月期本決算
【決算ウォッチ】スバル興業 2021年1月期本決算
映画館の運営から、道路の維持管理へと事業立地を大胆に変化させたおもしろい企業としてスバル興業(9632)のことを『スバル興業の事業立地』という記事で1月15日に取り上げた。その後、1月決算企業であるスバル興業は権利付最終売買日(1月27日)に向けて株価が上昇したものの、翌日の権利落ち以降は配当額以上の大幅な下落が続いていたため8,000円を割ったところで購入した。3月11日に2021年1月期本決算を発表したので確認したい。
1.決算概要
2021年1月期の売上高は27,460百万円(前期比+0.9%)、営業利益4,048百万円(同▲1.0%)となり、これまでの通期業績予想を僅かに超過しての着地となった。
合わせて、2022年1月期の通期業績予想も発表し、今期は売上高27,800百万円(前期比+1.2%)、営業利益4,000百万円(同▲1.2%)、当期純利益2,620百万円(同+0.2%)とほぼ前期並みの業績を見込むとした。
2.事業動向
以前、ブログで紹介したように、スバル興業は1946年に映画館の運営で創業したものの、1960年代頃になり娯楽の多様化により映画産業が成熟すると、新たな事業立地として道路関連事業へと進出していったおもしろい企業だ。現在は、祖業の映画館の運営からは撤退し、道路の穴やひび割れの補修工事、道路清掃や草刈り・除雪、高速道路の売店運営などを行なう道路関連事業が同社の柱となっており、売上高・営業利益ともに約9割を稼ぎ出している。
近年の業績推移を確認してみると、2013年1月期あたりから業績成長しており、明確な理由はわからないものの、高度経済成長期に整備された道路や橋梁の老朽化が進んでいることなどから道路の維持管理に関する需要が伸びているのかもしれない。そうだとすると、安全安心に関わるコストということもあり、官公庁の道路の維持管理に関する予算は今後も中長期的に増えこそすれ、大幅に減るというのはなかなか考えにくい。
そういった事業環境にあるため、2021年1月期決算も、コロナ禍にあっても(高速道路の売店、レジャー事業の飲食店では多少の影響はあるが)非常に安定した業績となっている。2022年1月期は、道路関連事業の好調、レジャー事業でのコロナ影響が小さくなり、不動産事業では前期取得した物件がフル寄与するため、おそらく前期並み以上を狙えるのではないか。
3.まとめ&感想等
【まとめ】
- 今期の業績予想も前期並みで、事業動向は安定している。
- 道路や橋梁の老朽化は、中長期的に道路関連事業に追い風。
- レジャー事業で新型コロナウイルスの影響、今期は影響軽減。
- 前期に不動産事業で新規物件を取得、今期フル寄与。
【IRに電話して確かめたい点】
- 今期の事業環境をどう見ているか。
- 業績予想の前提(コロナ影響等の見通し)。
- 近年の営業利益の増加の原因(工事採算改善?)。
- 短期貸付金をほぼ全額取り崩した理由。
- 不動産事業で取得する物件として底地を選んだ理由。
- 中期経営計画にある道路コンセッションの進展。
【投資判断】
継続保有。比較的保守的な業績予想をする傾向があるスバル興業だが、今期予想は前期並みと悪くなく、事業環境も安定しており、高い収益性、経営効率の高さは維持されると考える。配当も例年通り年末頃に300~350円配に修正するだろう。
業績が安定していて、高収益・高経営効率・高配当でありながら、割安であり続けるのはなぜなんだろう。
【感想等】
スバル興業の新卒採用ツイッターアカウントを見つけたが、フォロワー19人。地味だが素晴らしい企業なのでもっとたくさんの就活生に知ってもらえると良いなと思う。
今日の関連株
新報国製鉄の株主総会招集通知
新報国製鉄の株主総会招集通知
3月に入り、12月決算企業の株主総会招集通知が続々と公開され始めている。
株主総会招集通知には、株主総会の日時や開催会場、提出議案の説明はもちろん、決算短信よりも詳細な財務諸表、財務諸表注記、大株主の状況についても最も早く知ることができるため、情報源としての価値は意外と高い。
そのため、最近は毎朝、適時開示閲覧アプリでその日に公開された各社の株主総会招集通知を確認してから一日を始めているが、つい先日、招集通知からおもしろい企業を発見した。
なぜ、住宅展示場で株主総会を?
そのおもしろい企業とは新報国製鉄(5542)である。新報国製鉄は、半導体、液晶、有機ELの製造装置部品として使われる、高温でも膨張しない低熱膨張合金を手掛けるメーカーだ。この新報国製鉄の株主総会招集通知で目に留まったのは、不思議なことに株主総会を川越市の住宅展示場のインフォメーションセンターで開催していること。ちなみにもちろん新報国製鉄は住宅メーカーではない。
では、なぜ住宅展示場で株主総会を行なっているのか。
それは新報国製鉄がこの住宅展示場の地権者であるからだ。有価証券報告書にも住宅展示場のことは詳しくは記載されていないものの、新報国製鉄は川越市内に33,178㎡の土地を保有していると書かれており、新報国製鉄本社、スーパー、100円ショップ、そしてこの住宅展示場がある一帯を面積計測サイトで計測するとだいたい35,000㎡となることからこの一帯の土地を保有し賃貸していると推測できる。
実質的なPBRはもっと低い
新報国製鉄は、こうした賃貸等不動産から年間約1.5億円の利益を得ており、この土地の賃貸等不動産評価額は32.7億円に上っている。貸借対照表計上額がほぼゼロであるため、そっくりそのまま32.2億円の含み益を抱えている計算だ。
足元では「900℃でも膨張しない低熱膨張合金の量産技術を開発した」との報道で、仕手化し、2月末に1,000円台だった株価が3月5日には2年9か月ぶりに2,000円台に急伸し、PBRも1.59倍まで上昇しているが、2020年12月期の純資産42.3億円に比して不動産含み益が大きく、実質的なPBRはまだちょうど1倍というところ。値動きが再び1,000円台まで落ち着いてくるようなら実質PBRは約0.5倍となり十分魅力のある投資対象となるだろう。汎用品ではなく、低熱膨張合金というニッチで勝負している同社の事業も興味深く、余裕があったら今度は事業の方も分析してみたい。
今日の関連株
鉄道株について
鉄道株について
新型コロナウイルスが生活に影響を与え出してから約1年が経ち、ワクチン接種も始まるなど、先が見え始めてきた感がある。そうした状況の中で、アフターコロナを見据えて、年初から鉄道・私鉄各社の業績・事業動向や財務状況を確認していたが、その間にスルスルと株価が上がってしまい買い場を失ってしまった。
鉄道各社の株価推移を見てみると、ばらつきがあるものの、2020年2月25日からのコロナショックで約3割下落した後、7月に2番底をつけ、11月以降徐々に回復してきている。足元ではだいたいコロナ前の株価の7~8割だ。
しかし、こうして各社の値動きを比べると、オレンジ色の京王電鉄(9008)、赤色の新京成電鉄(9014)が目につく。京王電鉄はバブル期の1989年11月につけた最高値8,526円を更新しコロナ前=100として現在119.2、新京成電鉄はコロナ相場の中でコロナ前92.9とほぼ変わらない株価を一貫して維持している。好調な値動きの両社の共通点は、運輸事業で通勤・通学客が多く、観光関連事業の比重が低いという特徴があり、他の鉄道会社と比較して影響が小さく、業績の回復が早いとの見方から買われていると考えられる。
京浜急行電鉄(9006)は既に80.1まで回復しているが、品川駅周辺再開発のキープレイヤーであり今後間違いなく不動産収益・不動産含み益が拡大するのでどこかで買いたい。
JR各社については、出張客・観光客の比率が大きいものの損益分岐点が低い東海旅客鉄道(9022)が最も魅力的、西日本旅客鉄道(9021)がコロナ前68.9にとどまっている要因については今後調査したい。
今日の関連株
北越コーポレーションの2022年3月期
北越コーポレーションの2022年3月期
2月15日で上場企業各社の決算発表ラッシュが終わり、今日からは一息つきながら、いつも監視している企業の決算をゆっくり確認していくつもりだが、早速おもしろそうな事実を発見した。
北越コーポレーションの「重要な後発事象」
中堅製紙メーカーの北越コーポレーション(3865)の第3四半期決算短信をよく見ると、最後のページに「重要な後発事象」として賃貸用不動産の譲渡が記載されているのだ。
この賃貸用不動産は、墨田区両国のオフィスビルで、来期2022年3月期決算に27億円を特別利益として計上する見込みだという。
北越コーポレーションは、この他にも2020年8月に大阪府吹田市の自動車教習所とゴルフ練習場の土地(66,085.61㎡)の譲渡も決めており、こちらも2022年3月期決算に約40億円の特別利益を計上する予定だ。
2022年3月期は、本業の紙パルプ事業で徐々に新型コロナウイルスの影響が薄れていくと思われ、営業利益を保守的に50~60億円、持分法適用会社の大王製紙からの持分利益が約40億円程度と推定し、ここに67億円の固定資産売却益が上乗せされるとすると、北越コーポレーションは、一時的要因が大きいとはいえ、2022年3月期に10年ぶりに過去最高益(過去最高益は2012年3月期の12,673百万円)を更新するのではないか。
株価を上げなければならない理由
北越コーポレーションは、こうした遊休不動産の売却だけではなく、新型コロナウイルスの影響を受け、大幅な営業赤字に陥っている今期は50億円超の有価証券売却益でその赤字を埋めている。「紙パルプ事業への経営資源の集中」との会社側の説明はもっともだが、一連の動きは資産の益出しを急いで進めているようにも映る。
捻くれた見方をすれば、そこには株価を下げられない事情もあるのだろう。それはコロナショックで株価が大きく下落した2020年3月以降、「大王海運」なる企業が北越コーポレーションの株式を8.1%まで急速に買い増しており、会社側としては買収防衛策として株価を上げておきたい(下げたくない)のではないか。
詳しいことは明らかになっていないが、大王海運は大王製紙創業家が実質的なオーナーではないかとされており、北越コーポレーション(時価総額94,027百万円)が大王製紙(時価総額355,772百万円)の発行済み株式の24.7%を保有している歪な資本関係に着目した投資を行なっているのだと推測される。買収防衛策を導入しているとはいえ、三菱商事という安定株主を昨年失った北越コーポレーションが敵対的買収に晒されるリスクは高まっている。
一方で、北越コーポレーションが遊休不動産や投資有価証券を売却して得たキャッシュの使い道も気になるところであり、いずれにせよ、来期は製紙業界の再編と、そのキープレイヤーとして北越コーポレーションに注目したいと思う。
今日の関連株
【決算ウォッチ】タクマ 2021年3月期3Q
【決算ウォッチ】タクマ 2021年3月期3Q
会社四季報秋号で「これは」と感じて、すぐに買ったのがごみ処理プラント大手のタクマ(6013)だ。昨年9月のブログ記事では「年末目標株価2,250円」と書いたが、年末の株価は1,850円程度にとどまっていた。しかし、年明け1月7日にJPモルガン証券が新規に買い推奨として以降、右肩上がりに上場来高値となる2,345円まで上昇している。
そのタクマが2月10日に第3四半期決算を発表したので、今後の投資判断のために決算の内容をまとめたい。
1.決算概要
売上高105,584百万円(前期比+16.2%)、営業利益8,359百万円(同+36.9%)の増収増益。
通期業績予想に対する進捗率は、売上高で78.2%、営業利益で77.3%、当期純利益で78.9%となった。
2.事業動向
タクマは、ごみ処理プラントやバイオマス発電プラント等の建設、メンテナンス、運転管理、運営などを行なう企業で、両プラント製品ともに国内で最多の納入実績を持つ、この分野の大手だ。
ごみ処理プラントは20~30年が寿命だとされるが、国内の既設プラントの大半では稼働から20年を超えており、近年はその更新・延命化の需要が旺盛、バイオマス発電プラントにもFIT(固定価格買取)制度を背景に強い引き合いがある。それを物語るのが売上高の約2.8年分にあたる3,938億円(2020年3月末)まで積み上がった受注残高だ。2017年以降急激に増加している。
タクマが手掛けるごみ処理プラント、バイオマス発電プラントは受注から納入まで3~5年程度と長期に渡るものが多く、各期の工事の進捗に応じて収益・費用を計上しているが、新型コロナウイルスの影響も特に見られず、今第3四半期も工事の進捗は順調に進み、大幅な増収増益を達成した。
四半期毎に業績を見ると例年、第4四半期にかけて尻上がりに工事が進捗し、引き渡しも多くなるため、第3四半期時点で75%を超える進捗率は悪くない。通期業績予想の達成はかなり堅いだろう。また豊富な受注残高を抱えているため、来期も今期並みの業績予想を出すのではないか。
こうしたプラントを手掛けているわりには、業績が景気に左右されにくく、先の業績も見通しやすい点から、そうした企業を好んで投資する光通信(9435)が第5位株主となっていることも要注目だ。中長期的な企業の競争力に着目して投資を行なっていると思われる英THREAD NEEDLE INVESTMENTも2017年から大株主となっている。
3.まとめ・感想等
【まとめ】
- 国内の既設プラントの老朽化で更新・延命化の需要が旺盛、バイオマス発電プラントもFIT(固定価格買取)制度を背景に強い引き合い。
- 第3四半期時点の受注残高は第2四半期からさらに増加し3,965億円まで積み上がる。
- 新型コロナウイルスの影響は見られず。
- 例年尻上がりに業績が伸びるが、今期は第3四半期時点で75%超の進捗率。
- 豊富な受注残高をこなし、来期の業績も安定か。
- 2020年から光通信が買い増しを続けている(浮動株は3.6%しかない)。
【IRに電話して確かめたい点】
- 受注残高が急増している要因(DBO案件増加の影響はあるか)
- 新工場と受注残高急増の関係性(新工場稼働を見越して多めに受注している?)
- 来期の事業環境をどう見ているか
- 光通信やTHREAD NEEDLEからのコンタクトの有無
- 年末年始の電力価格高騰で電力小売事業に影響はあるか
【今後の投資判断】
2月10日終値ベースでは、PER21.06倍、PBR2.01倍でバリュエーション的には無理はないが、1月から続いていた上昇トレンドにも一服感が出そうだ。短期的には手仕舞いを検討する時期だろうか。ただ、現在建設中の新工場が2022年12月に稼働し始めると、生産能力向上で豊富な受注残高をこれまで以上のペースで消化していく可能性があり、2~3年の中期的な目線で保有するのもアリだと思っている。
今日の関連株
日本テレビタワーの価値
日本テレビタワーの価値
先月、電通グループ(4324)が港区・汐留にある本社ビル(地上48階建て、高さ210m)を売却を検討しているという報道があった。都心の一等地にあり、併設の商業施設や劇場を含めた売却額は、国内の不動産取引として過去最大となる3,000億円規模と想定されているとのこと。
電通本社がある港区・汐留は、旧国鉄・汐留貨物駅を再開発する形で2000年頃に生まれた街で、電通は1997年に土地17,225㎡を約1,300億円で落札し、2002年に約800億円を投じて本社と商業施設、劇場を建設している。2019年12月期の帳簿価額は1,792億円なので約1,200億円程度の売却益が出る価格だろうか。
電通は売却で得た資金で事業構造改革や成長投資に充てるという。
ところで、汐留の電通本社のすぐ向かいには、日本テレビホールディングス(9404)の本社「日本テレビタワー」(地上32階建て、高さ196m)もある。こちらも電通と同様に1997年に旧国鉄の土地15,658㎡を約1,000億円で落札し、約500億円かけて建てた高層ビルだ。放送局特有のスタジオ施設等があるが、将来的に賃貸オフィスとして転用できるように設計されているらしく、電通本社が約3,000億円ならば、日本テレビタワーもこれに近い価格で売却できるのではないか。
ざっくり試算してみても、日本テレビタワーの土地面積は15,658㎡で、令和2年度公示地価で最も近い地点である港区5‐17は11,000,000円/㎡であるので、土地部分の推定評価額は1,723億円、建物部分は複雑だが、控えめにみても計2,000億円くらいの評価だろうか。帳簿価額は1,290億円なので、700億円程度の売却益が発生しそうだ。
ただでさえ、日本テレビホールディングスは、ネット換金性資産(2020年3月期 3,835億円)が時価総額(3,632億円)を上回る割安な状態であるのに、日本テレビタワーや放送事業まで考慮に入れると、極端に割安な株価であると言える。
2月4日に発表した第3四半期決算を好感して、先週金曜日の株価は前日比+10.39%と急騰しているが、事業の強さや上記のような割安さを勘案すると、日本テレビホールディングスは買っておいた方がいいような気がしてならない。
今日の関連株
【決算ウォッチ】EIZO 2021年3月期3Q
【決算ウォッチ】EIZO 2021年3月期3Q
投資先の一つであるEIZO(6737)が2021年3月期第3四半期決算を1月29日に発表した。創業の経緯から保有している村田製作所株が急騰しており、また前期から同社株の保有目的を「特定投資」から「純投資」に変更していて、今期中のどこかで売却する可能性に注目している(詳しくは『純投資目的に変更した理由は?』)。村田製作所株に関して、今回は特に何もなかったが、EIZOの決算をチェックしたい。
1.決算概要
売上高53,507百万円(前期比▲3.7%)、営業利益4,612百万円(同+20.4%)の減収増益。
通期業績予想に対する進捗率は、売上高で75.8%、営業利益で80.9%、当期純利益で82.6%となった。
2.事業動向
EIZOは、三菱電機向けに白黒テレビのOEM供給を行なう電機メーカーとして1968年に石川県羽咋市に設立され、カラーテレビへの移行の中で、自社ブランドのモニター専業メーカーへと転換してきた企業だ。2002年の上場以降は売上高の大部分を占めていたアミューズメント(遊技機)市場向けモニターの縮小に対応し、ヘルスケア市場向けや航空管制用途、船舶用途などの分野を強化している。
今期は新型コロナウイルスの影響を受けて、第2四半期までは営業活動が制限されたヘルスケア市場向けが特に落ち込み、第2四半期時点では当期純利益の進捗率が28.6%と低水準にとどまっていた。
だが、今第3四半期は、前期好調だった反動があるV&S市場向け以外の全市場で回復がみられ、特に利益率の高いアミューズメント市場向けの好調が寄与し、進捗率は82.6%へと急上昇した。
アミューズメント市場向けでは、2021年11月までに新規則に対応した機種への入れ替えが求められている。新型コロナウイルスの影響を受けて延期されていた入れ替え需要がようやく出てきたようだ。2022年3月期にかけて好調が持続するのではないか。
また保有する414万株の村田製作所株の急騰により、総資産に占める投資有価証券の割合は約4割に上昇している。含み益の増加で「その他有価証券評価差額金」も膨れ上がり、一株純資産は過去最高の5,222.28円へ。
3.まとめ&感想
- 進捗率は第2四半期の28.6%から82.6%に急上昇。
- V&S市場向け以外の全市場で回復が見られる。
- アミューズメント市場向けが新規則機対応で急回復。来期まで好調継続か。
- 村田製作所株の急騰で投資有価証券は総資産の約4割に。評価差額金も大幅増。
第2四半期の進捗率が悪かったために株価は低迷していたが、通期予想達成はわりと堅くなり、来期に向けての光も見える内容の第3四半期決算だった。
そして12月末時点で総資産の約3割が「純投資」目的で保有する村田製作所株であるが、年明け以降、村田製作所株はさらに急騰している。これを今期中のどこかで売却するとの見方は不変であり、投資を継続。